クライアントは、コンサルタントを雇う時にどんな役割を期待しているのでしょうか?それがクライアントにとって、何のメリットがあるのでしょうか?それらをここで考えてみたいと思います。
大事なのは、クライアントは現状何らかの問題や課題を抱えているという前提に立って考える事(※)です。
※ 現実には、その問題や課題自体が曖昧で不明瞭なケースもありますが、それらは特殊な事例となりますので、ここでは考えないものとします。
では、実際にどのような役割が期待されているのかをまとめてみます。
1.高度な技能、知識の提供
クライアントがコンサルタントに期待し、依頼する第一の目的として、高度な技能や知識の活用があります。
特別なスキルを持っていないコンサルタントを雇う人は、現実においてほとんどいないでしょう。その理由は明らかで、クライアントが求めている専門スキルを持っていなければ、相談役として何の役にも立たないからです。
そのため、私もプロとしてこの部分においての妥協は一切していないつもりです。具体的に持っているスキルとしては、戦略分析・財務分析・英語があります。
(他にはPCやネットワークなど、IT系の知識も持っていますが、経営戦略コンサルティングと直接関係があるわけではないため、あまり表には出していません)
ただ、いくらスキルを持っていても、それらが寄せ集めではあまり意味がありません。統合されたノウハウとなって初めて実用性が生まれます。
2.情報提供
次に、上記の専門的ノウハウの提供は当然の役割として、それに加えて、政治・経済・テクノロジーなどの分野で価値ある情報を収集し、ご多忙なクライアントへ効率的に情報を共有する事も大事な仕事と言えます。
それと、過去のケーススタディなど、当時の成功事例または失敗事例を調べるのも仕事の一つです。ただし、成功・失敗要因は様々考えられますので、特に現代においては、参考程度に留めておく姿勢も重要となります。
いずれにしましても、コンサルタントにとって情報が命なことに変わりはありません。
3.第三者の視点によるプロのアドバイス
コンサルタントを雇うメリット三つ目として、第三者視点によるプロのアドバイスを提供できるという点があります。
あくまで私の経験上の話ですが、経営者の方にとってご自身のビジネス上の悩みを安心して相談できる人は、中々周りにはいないのが普通ではないでしょうか?
いくら精神的にタフな人が多いと言っても、一人で全て抱え込むのは負担が大きいです。
経営者同士で友人になるケースも多いでしょうが、それが同業者の場合はライバルともなるわけで、会社の内部事情までさらけ出す事は中々出来ません。
そのような人間関係のしがらみがなく、プロの技能と守秘義務に徹底した外部コンサルタントに相談するメリットは、ご想像以上に大きいと思います。
参考までに、これは公式データではないのですが、ある書籍によると、欧米ではコンサルタントを活用する経営者の割合が日本の約3倍とも推定されています。ニワトリが先かタマゴが先かは分かりませんけれど、私が海外で暮らし・見聞きした限りにおいては、確かに経済が成長・発展していた国ほどコンサルタントも活発に活動していた記憶があります。
4.プロジェクトの橋渡し
また、普段あまり意識される事はないのですが、コンサルタントはプロジェクトや事業の橋渡し役としても機能します。
例えば、「自社でネットショップを開設したいので、外部にサイト作成を委託したい」となった場合、どういう業者にお願いした方が良いかは、クライアントの状況によって異なります。
Eコマースの有識者が社内にいれば良いですが、そういう人材がいなければ、委託先の技術力や信頼性を経営者ご自身だけで判断するのはリスクとなりますし、仕事を依頼した後、仮にサイト作成途中に大きな問題が見つかったからと言って、計画を軌道修正するのは非常に困難です。
私の場合ですと、自身のスキル・経験を基に、相手担当者の熱意、技術力、実績などを総合的に判断して、最も収益やコストにインパクトのあると思われる委託先を選別し、クライアントに推薦します。その時のプロジェクトの進行状況によっては、相談だけではなく、計画実行支援までお引き受けする事もあります。
また、クライアントの要件次第では、サイトデザインやデータベースを一から設計・開発するよりも、既存サービスを利用した方が短時間で安価に構築でき、利益を生みやすい場合もあります。そのようなケースでは、仮にプロジェクトの主旨とは異なっていても、クライアントの利益のために、他の代替案を念のためご提案する事もあります。
5.ビジネスカウンセリング+人材育成
最後に、ビジネスにおける普遍的課題として、『人』が起因となって中々物事が進まないケースが年々増しているように見えます。
昔は『仕事はこうあるべき』という考え方や、『社会人としてのマナー・ルール』というものが、一般常識として世間に浸透していました。
しかし、今は価値観が多様化し、さらにはデジタルトランスフォーメーション(DX)やテレワークなど、企業間・個人間での意思疎通も難しくなっています。そのためか、悩みも多様化しているようです。コンサルティングサービスでも、このような問題を避けては通れなくなってきたと感じます。
例えば、チームでクリエイティブな仕事を請け負う場合、事業分析と共に、人間関係が成功のカギとなる事は珍しくありません。
そこで私は、特に長期プロジェクトにおいて、人の悩みを解決に導く『ビジネスカウンセラー』のような役割も(必要に応じて)担うよう努めています。『代表のご挨拶』でもお話ししましたように、お客様との信頼関係が全ての始まりだからです。
つまるところ、ビジネスとは人に始まり、そして人に終わるという事だと思います。
6.まとめ
以上、クライアントが戦略コンサルタントを雇う一般的な理由およびメリットについてまとめてみました。
ほとんどのお客様は、コンサルタントの持っている専門技能を理由に雇われます。でも、それだけでは問題解決につながらないケースもあります。
プロジェクトの成功には、時にマクロ環境の情報にもアンテナを張り巡らせたり、第三者の視点でアドバイスをしたり、プロジェクトの橋渡しをしたり、またはカウンセリングのようなお仕事を担う必要が出てくるかもしれません。
私が以前聞いたお話として、15年前の経営戦略コンサルタントは論理思考重視でした。しかしそれが今は、専門スキルや洞察力に加え、DX・AIなどの知識もある程度求められます。そのため、コンサルタントとしての適性資質も多様化しています。
全世界で大問題となったコロナパンデミックは過ぎ去ったかのように見えますが、それでもテレワーク・在宅ワークという新しい仕事の形が、今後も完全に無くなる事はないでしょう。
クライアントあってのコンサルタント業なので、戦略コンサルタントも社会の変化に応じた新しい形のサービスを提供していく必要があります。