なぜ日本は世界に先駆けてイノベーションを生み出せないのか?

こんにちは

今回はいつもと趣向を変え、カジュアルに書きます。なぜ日本は世界に先駆けてイノベーションを生み出せないのか、その原因についての考察です。

昨今、世界的な景気悪化が予測される中で、日本だけ過去何十年間もずっと衰退を続けてきました。おそらく、日本の衰退とイノベーションが生まれない事との間には、何らかの因果関係があります。

視点を変えれば、日本はまだまだ幸せです。しかし、その幸福の時はいずれ終わります。国際社会の不安定化に加え、国内では極端な少子高齢化社会が待っているからです。

そもそも、『イノベーション』とはどういう意味かと言いますと、そのまま訳すと『革新』や『改革』となります。つまり、人・モノ・組織・サービス・仕組みなどに、新たな考え方や技術を取り入れて新たな価値を生み出し、社会にインパクトのある革新や変革をもたらす事を言います。

たまにニュースでは、他の国の成功事例を持ってきて、「日本もこうすべき」という論調が見られますが、それはあまりに安直であり、多くの場合間違いです。なぜならば、少子高齢化など、日本が先陣を切って直面している問題も中にはあるからです。

他国の歴史・文化背景を考えずに、都合の良い解決策だけを切り取ってきて、絆創膏のように張り付けた所で、一時的にはその問題を覆い隠せるかもしれませんが、大抵の場合は何の問題解決にもなりません。

家のリフォームのように、現状を十分理解した上で、何をどのように直すべきか、日本人が自ら答えを見つける必要があります。そのためには、外面だけではなく、人の内面にも意識を向ける事が大事です。

ここでは、イノベーションが生まれない理由の考察をした後で、「日本人はイノベーションを生み出している」という逆の仮説についても論じてみます。

そこから、私たち日本人が今後取るべき道を提言したいと思います。

とは言いましても、今までのようにあまり根を詰めて書くつもりはありません。この時事問題に関するコラムでは、私が現在持っている知識・経験を活用して、カジュアルに書いていきます。いわゆる、日記・雑記のようなものと考えてください。

1.日本人がイノベーションを生み出せない理由とは?

では、日本人がイノベーションを生み出せない理由について、考えてみましょう。

そもそも、既存の何かを改革したり、革新的なアイデアを実行したりするためには、人として何が必要でしょうか?

いろいろ思いつきますが、私はやはり、何か変化を生み出す土台・大元は人間にあると思っています。なので、人を中心に考えてみます。

知識・技術・経験、そして何より、その人個人の素質および人間力が不可欠と考えています。アイデアを生み出す基礎的な発想力と、行動に移す実行力が備わっていなければ、そもそも何も始まりませんし、何も生まれません。

人間力とは何を指すかと言いますと、私の場合、世の中で生きていくための能力です。それはコミュニケーション力であったり、儲け話をかぎ分ける直感力であったり、人々を導くカリスマ性であったり、善悪を判断する力であったり、物事を決める決断力であったり、行動に移す実行力であったりと、とにかく様々あります。

素質や人間力については、生まれつきのものもあるので中々議論が難しいのですが、経験を積み重ねることで、改善・補完できる場合もあります。いずれにしても、人生において自分の生まれ持ったものに反する生き方は、極力選ばない方が良いでしょう。個人の幸せの観点からも、社会の安全・安定のためにも、適材適所が原則です。

したがいまして、大半の人にとって重要となるのは、努力次第で何とでもなる、知識・技術・経験の方となります。日本でイノベーションが生まれない理由は、これら三つの力が不足しているからかもしれません。違う可能性もありますが、とりあえずこれが正しいと仮定して話を進めてみましょう。

ではなぜ知識・技術・経験が不足しがちになるかと言えば、モチベーションが低い、つまりやる気が出ないからではないでしょうか?

モチベーションが上がらない理由としては、マクロ的な視点では、新しい革新的な事業を始めようとしても、政治・外交・経済レベルで保守的な政府および役所から公的なバックアップが見込めず、法律レベルでは事業者に規制や行動の制約がかけられていたり、それに少子化により将来国家としての成長が見込めないので、日本は投資先として魅力的に見えず、さらに世界的な景気後退によるリスク回避で投資控えが起きて企業の資金調達が難しくなっていたり、そして日本社会の寛容性の低さから、新しい考えへの理解や行動時の妨げとなっていたり、そもそも大学・民間レベルでイノベーションに必要となる学問や基礎研究の積み重ねが不十分であったりする事が考えられます。

1-マクロ視点でのイノベーションが生み出せない理由

一方、ミクロな視点でやる気が出ない理由を考えてみますと、働く社員の給料が安かったり、コスト高や資金不足で企業が必要な設備投資を出来なかったり、学ぶための時間や場所が無かったり、上司のリーダーシップやマネジメント力が不足していたり、成果を出しにくい非効率な組織構造になっていたり、特殊な企業風土が社員の企画提案や行動の障害となっていたり、社内の人間関係に問題があったり、顧客ニーズや需要を読み間違えていたりする事が考えられます。

1-ミクロ視点でのイノベーションが生み出せない理由

2.日本人がイノベーションを生み出している理由とは?

では逆に、「日本人がイノベーションを生み出している」という仮説の元ではどうでしょう?

こちらも同じ理由で、人を軸にして考えます。

イノベーションを生み出しているという事は、そのプロジェクトに携わっている人たちは少なくともモチベーションが高く、計画作成や実行のために必要となる条件(知識・技術・経験・素質・人間力など)が一通り揃っているという事になります。

モチベーションが高くなるマクロ的な環境要因とすれば、例えば政治・経済的な公的バックアップがあり、法律的な縛りも少なく、世界的な景気回復と日本の将来性を見越して海外から資金が集まり、新しい考えや行動に対して社会が寛容的で、大学や民間レベルでイノベーションに必要となる基礎研究の積み重ねがある、という事が考えられます。

2-マクロ視点でのイノベーションが生み出せる理由

後、ミクロ的な内的要因でモチベーションが高い理由を考えてみますと、社員の給料が高く、資金が適切に分配されて必要な設備投資がなされ、学ぶための時間や場所を企業が提供し、優れたリーダーがチームを統率し、成果を出しやすい効率的な組織構造となっており、新しいアイデアに対して寛容的で行動しやすい企業風土があり、社内の人間関係が良く、顧客ニーズや需要があるという共通認識の下で、皆が行動出来ている事が考えられます。

2-ミクロ視点でのイノベーションが生み出せる理由

そのおかげで、関係者は一生懸命に学び、スキルを向上させ、新しい事への挑戦で経験・実績を積み上げ、それらをノウハウとして競争力を高めていく事ができます。

要は、前段落の逆の条件が揃っていれば、イノベーションは生まれやすいという事です。

3.見方次第で日本の評価は異なる

こうやって考えていきますと、一つ気づいた事があります。それは、グローバルな視点と、企業・個人単位の視点とでは、日本や日本企業に対する評価は異なるという可能性です。

3-1.グローバルの視点では、日本はイノベーションを生み出せていない

グローバルでイノベーションを起こすには、マクロとミクロの両方の戦略が不可欠となります。しかし、日本の場合、マクロ戦略が特に弱い傾向にあります。

例えば、政治・外交・経済の分野では、強力な公的バックアップは見込めませんし、法律面では中小企業や個人レベルでは把握できないほど様々な規制がかけられています。一部産業を除き、少子高齢化で市場縮小が決まっている日本に対し、わざわざ投資をしてくれる外国企業も少ないでしょう。また、日本社会は新しい考えに対しては基本的に不寛容な一方で、一度社会的に認知されると、右に倣えで一気に変化する傾向にあります。そのため、いつも出遅れて、周りの後追いをすることになります。後は、すぐに結果の出る学問や研究ばかりが優先されてきたためか、基礎学力の低下が著しい感じがします。

法律面での規制についてもう少し付け足しますと、仮に誰もやった事のない新しいサービスを何か始めようとしても、中小企業や個人レベルでは、中々ハードルが高いという事です。

以前、成功した何人かの経営者の方からお話を聞く機会がありましたが、彼らで共通していたのは「昔と同じやり方で再び事業を興そうとしても、現代だと失敗するだろう」という事でした。私もその意見に同感です。理由の一つとして、当時には無かった規制や制約が、今の時代にはあったりするため、それが、事業立ち上げ時の足かせや妨げになったりするケースがあるためです。

それと、学力の低下については、別に何かのデータを見てそう思ったわけではなく、ネットで評価されている記事や動画を私が見て、勝手にそう思いました。昔はよく見かけた気がするのですが、今は一般人お断りのような、小難しい記事や癖の強い動画はネット上で中々見つけられません。検索しても出てこず、どうやって探せばよいのかも分かりません。広告が沢山貼られているごちゃごちゃしたサイトしかヒットせず、たまにはすっきりしたデザインのホームページも見てみたいものです。

世間では文章が読みやすく、動画も見やすいコンテンツが多いですが、何か辞書を引いているような感じで、知識ばかりが増えていく気がします。

軽いダンベルをいくら持ち上げたところで、筋肉はつきません。『水は高きより低きに流れ』とはよく言ったもので、鮭の川登りのように、重力に逆らってさらなる高みを望むのであれば、やはりある程度ストレスを受けている状態での努力・研鑽が必要となります。

そのように考えていきますと、日本が世界的にイノベーションを生み出せていないのは確かかもしれませんが、じゃあ諸外国がイノベーションを生み出しているかと言うと、上辺ではそう見えるだけで、必ずしもそうではないのかもしれません。

3-2.国内の企業・個人単位では、イノベーションが生まれやすくなっている

その一方で、日本国内の企業や個人単位で見ますと、イノベーションを生み出している会社や個人の方はそれなりにいるようです。

マクロ的な影響力が比較的少ない分野、例えば観光業や飲食業などでは、様々な風変わりビジネスが次々と生まれています。テレビでもよく紹介されていますね。参入障壁が低く、企業や個人単位での戦略さえしっかりしてれば、何とかなる事が多いからでしょう。

つまり、日本全体では没落していたとしても、企業や個人レベルでは多くの日本人が努力し、結果を出している人もいる事が分かります。

例えばこれが、テック系・デジタル系のビジネスになりますと、ミクロ戦略と共に優れたマクロ戦略がイノベーション成功の条件となります。そのため、日本企業がこの分野で後れを取っている問題は、政治・経済・法律・国民性・教育などのマクロ要因をまずは何とかしなければいけません。

4.日本が取るべき道とは?

以上のように、企業・個人単位では頑張っている日本人が多い以上、後はマクロ的な環境要因に対する優れた国家戦略が必要となります。

ではどうすれば良いかと言うと、大局的な視野を持った政治家を選挙で選び、外交力(防衛力含む)を高め、法律や制度は全て一から見直してマイナンバーに基づくシステム簡素化を行い、補助金や助成金については、利害関係のない第三者も参加して審査・評価をします。

ただ、政治家を選ぶ際の悩みどころとしては、選挙システム自体に問題があるという事です。基本的に私は、自分の意見を大声でまたは流暢に主張する人を、あまり信用はしません。自分を魅せるのがうまい人も中にはいるので、実際に何度かお会いして話してみない事には、その方の人間性までは判断できないからです。

よって選挙の際は、政治家の雰囲気や印象を判断の基準とはせず、純粋に内容で選ぶ事が大事に思います。つまり、街頭での演説を聞いただけでは、具体的な政策内容までは分からないので、それだけでは判断する材料としては不十分という事です。意外と簡単な事ではありません。

個人的には、誠実で勇気のある人に政治家になってほしいです。別な言い方をすれば、「この人がリーダーになったら、一緒に命を懸けて戦う気になるか」という基準で可能であれば判断したいです。西郷隆盛・高杉晋作・河井継之助など、過去の日本にはそのような武人たちが実在したのですから、現代においてもそのような人たちを見てみたくなります。

後は、こういう話をすると必ず増税という方向に議論が行きますけれど、それならば誰でもできます。政治家や官僚は、皆優秀な大学を卒業し、そして高いお金をもらっているのですから、国にお金が無ければどうすれば良いか、よく考えてほしいと思います。売上を出し、費用がかかり、そして利益や損失が生まれます。突き詰めればそれだけですから、どうすれば良いかは分かるはずです。複雑な理論は必要ありません。分かっていても実行困難な事に問題があります。歴史を学び、同じ過ちを何度も繰り返してはなりません。

教育については、生きるとはどういう事か、その原点に立ち返って本当に必要なもののみを義務教育で行います。国語や算数などの基礎学問を重視し、他には、税金などの社会制度の仕組みについても教えておきます。

生きていく上で知る必要のある社会の基本的仕組みについては、義務教育の範囲で教えておくべきです。もし、中学生に教えられないほど複雑なシステムと現状なっているのであれば、それは根本的に間違っているという事なので、修正が必要となります。

繰り返しますが、他所の国がそうだからと思考停止してはなりません。彼らは彼らで深刻な問題を抱えているからです。ただ真似をしてしまえば、彼らの抱えている問題まで真似してしまう事になります。『よそはよそ、うちはうち』という考え方も時には重要となります。

それと、IT・デジタル・AIなどの技術的な遅れは、下手に急いで取り戻そうとすると、子供の心身が犠牲になってしまうので諦めが肝心です。10年単位の長期戦略で、基礎技術・研究の蓄積からやり直す必要があります。

例えば、台湾が半導体の分野でトップを走っている理由は、過去何十年にも及ぶ、基礎的な学問の積み重ねによるものです。沢山の台湾人は、欧米の大学へ留学し、そこで技術を真面目に学んできました。私は2000年代にオーストラリアの大学で多くの台湾人と一緒に勉強していましたので、その現実を他の誰よりもよく分かっています。

5年や10年無理に頑張ったところで、取り戻せる遅れではありません。大人の浅はかな知恵とエゴで、これ以上子供を犠牲にしてはなりません。

5.まとめ

とりあえず、ここでいったん止めておきます。

ポイントは、日本が再びイノベーションを生み出せる国となるためには、まずはマクロ的な国家戦略を何とかしなくてはならないという事です。そのため、ここでは企業や個人など、ミクロ的な部分での提言はしませんでした。

例えば、『人がやりたがらない仕事ほど、高い給料を出すべき』など、いろいろ細かい課題はありますけれど、そんな事をここで言ったらきりがないので、実際のコンサルティング時にクライアントの状況を鑑みながら適宜提案していく事にします。

やる気のある企業や個人は日本にもいる事は分かりましたから、あと必要なのは優秀な受け皿となります。しかし、言うのは簡単ですが、残念ながらここ数年でどうにかなる問題ではありません。国家戦略は、基本的に10年単位のライフワークで取り組むべきです。そうしなければ、必ずどこかに無理が生じますし、真っ先にその犠牲となるのは子供たちとなります。

まずは、自分が無知な人間であるという事を大人たちは自身で悟らなければなりません。そして、何のために生きているのか、その疑問に答えを出せる国家・社会・教育システムを自ら作っていく必要があります。そうしなければ、人間は悲しい歴史を何度も繰り返すだけとなるでしょう。

もし、人類がその程度の精神的進化で止まってしまうのであれば、進化した未来のAIは人間をどのように評価・判断するでしょうか?いつまでも人間の言う事を聞くでしょうか?あなたが逆の立場だったらどのように判断するでしょうか?

誰かに支配されて自由を失うのは嫌なので、最後まで努力し続けます。それが私の『力への意志』となります。

戦略コンサルタント
味水 隆廣