イトーヨーカドーの北海道・東北からの事業撤退を防ぐ方法は無かったのか?
皆さま、こんにちは
今回は、地元石巻からイトーヨーカドーが撤退するという『ニュース』を受けて、一利用者として私が感じている事を書きたいと思います。あまりに突然のニュースで驚いた人も多かったのではないでしょうか?
東洋経済新聞では、『大量閉店「イトーヨーカドー」どこで間違えたのか』、『イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた”厳しさ”』という記事を拝見しました。ライターの方が、閉店理由を他の企業と比較しながら多角的に論じておられます。
コンサルタントとして考えますと、私も著者と似たようなアプローチでリサーチや分析を行うと思うのですが、ただ、何年も前から経営状況はすでに悪化していたと考えられるので、トランスフォーメーションに時間がかかり、かつ初期投資額が膨らみがちな抜本的改善策案を中々内部で採用・実行しづらかったのかな?とも感じました。
そこでここでは、うまくいくかどうかは別として、大量閉店を防ぐために極力時間やお金をかけずに売上を増やせそうだったと思われる方法を、一つだけ書いてみたいと思います。コンビニエンスストアに注力するとか、衣服売り場などを無くすとかは、これを試した後でも良かった気がします。
1.利用者に向けて、自社の経営状況悪化を素直に伝えるべきだったのでは?
それは、悪化した収益を早急に改善するために、お店を定期的に利用しているお客様に向けて、『イトーヨーカドーの経営状況が悪化しており、このままでは閉店を余儀なくされるかもしれない』という現実を正直に伝えるべきだったと思います。
これは、顧客の応援心や同情心、つまり善意に訴えるやり方です。そのため、前提条件としては、衣食住など人々の生活を直接支えているエッセンシャル企業に限ります。一般的にはこのやり方をお勧めはしません。あくまで例外と捉えてください。
また、世の中には自社の問題をさらけ出す経営者や企業を正当に評価する人ばかりではないため、もし実行するのであれば経営者の方も相応の覚悟が必要となります。
2.事前に知っていればもっと頻繁に来店したのに…
一消費者として、もしイトーヨーカドーの経営が悪化していると事前に知っていたら、もっと頻繁に来店してお店を応援していたと思います。通常は毎月一回くらいの頻度でしたけれど、それを毎月二回程度に増やすくらいでしたら負担も少ないですし。
応援する理由は、イトーヨーカドーにはイオンやヨークベニマル等には無い、昭和独特の雰囲気がまだ微かに残っているからです。店内にあるファーストフード店『ポッポ』や、無駄に広い衣服売り場を見ると、一瞬でも子供時代に戻った気がします。
ですから、イトーヨーカドーの顧客層は、主に昭和世代の40代以上が多いと感じます。
イオンやヨークベニマルもよく利用しますけれど、そちらには「必要性がある」から行き、一方のイトーヨーカドーは「たまに行きたくなる」から行きます。そうやってお店を使い分けているので、無くなると個人的に困ります。こういうニーズって意外とあると思うのですけれどね。
他で代替が出来ないので、「ヨークベニマルに事業譲渡されるから問題ない」という考えにはなりません。
3.リピーター客の応援心を喚起すれば、事業継続の可能性もあったのでは?
現状、一店舗でどれだけの利用者数がいるのか分からないので、本当にざっくりとした試算になりますが、例えば、毎月一回一万円を食料品などで使っていたとしたら、それが毎月二回になれば二万円になります。
仮に、利用者の応援心で毎月1,000人来店者数(リピーター客数)が増えたとしたら、月で1,000万円、つまり年間では1億2,000万円売上が増える事になります。これは事業を継続する上で結構大きいですよね。
4.なぜイトーヨーカドーの経営悪化に気づかなかったのか?
ちなみに、私は今までイトーヨーカドーを利用していて、経営状況の悪化には気づきませんでした。
なぜ気づかなかったかと言いますと、一番大きな理由は、食料品売り場がいつも盛況だったからだと思います。他では売っていない食料品があったり、生鮮食品などを入れるビニール袋が大きくて入れやすかったりと、消費者目線での取り組みが良かったので、特に困っているようには見えませんでした。
確かに、人がまばらで閑散としている衣服売り場や化粧品売り場などの維持コストを「どうやって賄っているのかな?」と以前から不思議には思ってはいましたけれど、「食料品売り場の売上で何とかなっているのかな?」とあまり深くは考えないようにしていました。
現実には太っ腹なサービスを提供していた分、いくら売上があっても全体の営業利益を圧迫していたのでしょうね。
5.まとめ
今回の記事は、イトーヨーカドーの北海道・東北からの事業撤退を防ぐ方法は無かったのかについて考察しました。
イトーヨーカドーが失敗した原因について、マクロ・業界視点での全体的な分析は他の方がすでに行っておられますので、ここでは一利用者として、企業があまりお金をかけずに実行できたかもしれない売上増の方法を試しに書いてみました。
注意点として、売上を増やすために利用者の応援心や同情心を煽る方法は、一般的にはお勧めしないという事です。人々の生活を直接支えているエッセンシャル企業だからこそ許されると思います。
長期的に見れば、イトーヨーカドーも新規の顧客開拓を避けては通れないでしょうが、その前にまずは、既存顧客のニーズや需要を十分に把握し、リピーターファンに対して頭を下げて、既存顧客の回転数を上げるための対策を行うべきだったと感じました。ショッピングモール化など、多額の資金を使ってトランスフォーメーションを実施するのは、それからでも良いでしょう。
誰をターゲットとするかにもよるでしょうが、イトーヨーカドーの基本的ビジネス戦略はそこまで間違っていたとは思いません。普段は効率や安さ重視で他店を利用していても、たまにはそれ以外の価値を体験するために来店したくなるからです。
近所からイトーヨーカドーが無くなってしまうのは本当に残念だったので書いてみました。
おわり