熊ハンターの少ない報酬額から見えてくる日本の課題-ニーズがあり、リスクも伴うのになぜ?

皆さま、こんにちは

今回は、クマ出没時に対応するハンターの報酬額が少ない問題が最近ニュースで話題になっておりますので、その件について私見を述べたいと思います。

熊注意

普通に考えますと、クマが人に危害をもたらす可能性があり、「捕獲・駆除してほしい」という社会的ニーズがあれば、報酬額もそれに見合ったものになるはずです。

加えて、ハンターご自身も生命が脅かされるリスクを取ってクマに対応するわけですから、基本報酬に危険手当が加味されるのは当然に思います。

それが、日当8500円というニュースを最初目にした時は驚きました。(他の業界も似たり寄ったりだったりするので、すぐに事情は察する事ができましたけれど)

指差し男性猟師(困る)

常識的にその報酬額が妥当かどうかは、逆の立場で考えてみればすぐに分かるはずです。

例えば、お金を出す側の町長や公務員の方が、一日8500円で同じ仕事をやろうと思うのでしょうか?さらに、いつ熊捕獲の依頼が来るかも分からない不定期なお仕事のために、普段従事している他のお仕事を簡単に後回しに出来るでしょうか?

なぜきつくて危険なお仕事ほど待遇が低くなる傾向にあるのかと言えば、需要と供給に基づく健全なマーケットが形成されていないからです。なぜ健全でないかと言えば、利権だったり、規制だったり、その土地の慣習だったりと様々な理由が考えられるため、現実的には特定の地域内だけでの解決はあまり期待できないと思います。

需要と供給のイラスト(需要が多い)

したがって、ハンターの仕事に限ったお話ではないのですが、正当な待遇とするために第三者の意見を交え、国が音頭を取って解決策を模索する必要があります。

すでにこちらのページ『適材適所で人材不足という社会的問題を解決する』で書いた内容と被る部分もありますけれど、私の意見を一応まとめてみようと思います。

1.古い職業慣習が続いており、待遇の不均衡が起きている

まず、危険なのに待遇が低くなる要因の一つとして、古い職業慣習が続いている可能性があります。

今回のハンターの件もそうですが、なぜこんな事になってしまうのかと言えば、人物および仕事に対する公正・公平な評価方法が日本で整っていないからです。それによって、待遇の不均衡が生じてくるのは当然と言えます。

五段階評価

2.もはや「金は天下の回りもの」ではない

例えば、金融資産は国全体で増えている一方で、5人に1人が年収200万円代以下になっているというおかしな状況が生まれたりするのはそれが理由です。かつては『一億総中流』と言われた日本も、残念ながら欧米並みに貧富の格差が拡がりつつあります。

昔は「金は天下の回りもの」と言いましたけれど、もはやそうではありません。

金は天下の回りもの

3.仕事に対して正当な対価を支払うのが当たり前の世の中にしていく

現在問題となっている、熊を捕獲・駆除するハンターの報酬が低すぎる件に関して言えば、初めに申し上げた通り昔からの職業慣習が今でも続いているからでしょう。

ハンターというお仕事は労働集約型ですし、元々お金儲けに興味のある人が率先してやる職業ではないので、多分地域コミュニティを守るために今まではボランティアのつもりでやっていた人が多かったのだと思います。

しかしながら今の時代、ボランティア精神の旺盛な人でさえ無償での自発的活動は難しくなっています。市場が縮小してお金が稼ぎづらくなり、コロナや戦争で物価が高騰しているにも関わらず、重い税金は毎年容赦なくかかってくるからです。

道路掃除する男性

タイパ』のような「時間対効果」を求めるような若い世代が中心になれば、より合理的な考え方が一般化するかもしれません。

いずれにしましても、これからは個人の労働や特別な社会貢献に対しては、正当な対価を支払うのが当たり前の世の中にしていく必要があります。そうしないと安定した社会が維持できなくなってしまうからです。

4.他に待遇が低くなる要因について

他に、きつくて危険なお仕事ほど待遇が低くなる要因として考えられるのは、マクロ視点での人材管理データベースが日本に無いこと、第三者機関による労働安全のチェックシステムが無いこと、そして価値観の多様化と他者に対する無関心・不寛容化が挙げられます。

それらについては、『適材適所で人材不足という社会的問題を解決する』のページで言及していますので、ご興味ありましたらご覧ください。

5.まとめ

以上となります。

熊ハンターは社会の安全・安心に寄与する、リスクの高い危険なお仕事です。待遇を改善し、役所との信頼関係を構築し直すのが難しければ、いっその事、公務員の方々が自らハンターとなる訓練を受けるか、もしくはベテランのハンターを福利厚生の充実した公務員として雇ってあげるのが良いと思います。

これだけライフスタイルや仕事が多様化している中で、報酬を仕事内容で評価するのではなく、昔からの慣習や正規・非正規のような立場だけで決める事自体が本来おかしいのですから。

今回論じたトピックは、決して特定の業界内で終わる話ではありません。日本全体が抱えている病巣なので、国が真剣に対策を打ち出す段階に来ていると思います。

おわり

6.参考リンク