GoToトラベルによる経済・社会への影響をブレインストームしてみる【時事】
皆さま、こんにちは!
最近、ニュースを騒がせているGoToトラベル関連のトピックについて、自分は旅行に行く予定もないので、当初興味は無かったんですけれども、いくつか注目すべき点があると感じました。
それらをまとめたいと思います。
GoToイートの方も、外出して飲食するという点ではトラベルと共通していますので、同じものとして考えます。
あと、支援内容については旅行代金の割引や、地域で使える共通クーポンがあるようですが、私は使ったことがないので詳しくは分かりません。
ですので細かい内容は考えずに、なぜ今騒がれているのか、本質と思われる部分だけに集中して考察します。
何か公的なデータが出されているわけではないので、あくまで現状を見ての私の個人的な意見です。
何が正しいかを証明するのではなく、どこに議論の余地があるのか、それを洗い出すための、予備的リサーチとなります。
それでは始めます。
1.GoToトラベルの目的とは?
まず、ネットでいろいろな方の意見を読んでいて私が気になったのは、そもそもGoToトラベルの目的は何なのか?という事です。
良い政策なのかそうでないかの公平な評価を行うためにも、目的の明確化が最初に必須だと思います。
しかし、現状人によって異なった前提でお話をされているようなので、話がかみ合っていないケースが多々見受けられます。
例えば、ある人はコロナ禍で今大変な旅行業界・飲食業界へ支援するために必要なんだ、というご意見でした。
一方で、他の方々は日本の経済を回すために必要、というお話をされていたと思います。
ある特定の業界に支援する事業と、日本全体の経済を維持するための事業では、意味合いが異なります。
違う目的・仮説の基で政策が実施されれば、当然評価基準も異なってきます。ですので、最初に目的を明確化することは非常に重要です。
ちなみに、公式ページにもなぜGoToトラベルが実施されるのか、その理由は記載されていませんでした。
『お得に旅行するための期間限定割引サービス』、という風にしかHPからは読み取れません。
普通のビジネスであればそれで問題ありませんけれど、一応公共事業ですので、社会的意義について、なぜ行うのかについて、最初に大きく書いておいた方が良いのかなと思いました。
2.どのような検証が必要?
次に、GoTo事業を行う目的によって、検証内容も異なりますので、目的別にそれぞれ何をチェックしなくてはならないかを確認します。
まず、旅行業界・飲食業界への支援が目的の場合は、『必要な支援が必要とされているところに行き届いているか?』を重点的にチェックしていく必要があります。
そして、日本経済を回すことが目的の場合は、『実際に経済が回っているか、どの程度回っているか?』の検証が必要になります。
このように、目的が複数存在したり曖昧な状態ですと、結局政策が正しいかどうかの証明も後で難しくなります。
今は非常時と言えますので、平時とは異なる考え方が必要です。
3.ブレインストーミング
それでは前置きはここまでにして、GoToトラベル事業の全体像が私は良く見えていないので、とりあえずブレインストーミングしてみましょう。
目的を『GoToトラベルの利害関係者把握と、経済・社会への影響とは?』とします。
まずは利害関係者を洗い出していきます。
一つ目は、事業を推進している政治や行政ですね。そして二つ目は、GoTo関連のサービスを提供している事業者。三つ目は、そのサービスを利用するユーザー(顧客)。そして、最後は上記以外の利害関係がない事業者や一般人とします。
ここで、最初どこから見ていけば良いでしょうか?
私はなぜこの件が世間で騒がれているのか、状況把握をしたいので、実際にサービスを提供している事業者と、その利用客から見ていくことにします。
まずはGoTo利用客について考えてみましょう。
その際、大きく二つに分けられます。海外からの訪日観光客、そして国内旅行客です。
ここで、以前ニュースで海外からの旅行客、つまりインバウンドの需要がほぼ無くなったと報じていたので、現在はほぼゼロと仮定します。
そのため、ユーザー(利用客)は全て国内旅行客のみとして進めることにいたします。
次にGoTo関連のサービスを提供している事業者について見ていきたいと思います。
公式HPを見てみると、割引やクーポンなどのサービスを受けるためには大きく二つのやり方があるようです。
一つは、旅行会社または旅行予約サイトから申し込む方法。そして、宿泊施設に直接申し込む方法があります。
どちらがより多くの人に利用されているでしょうか?
私が思うに、旅行会社や予約サイトから申し込む人がほとんどだと思われます。
理由は、こちらの方が利便性が高く、メリットも大きい場合があるからです。
例えば、旅行予約サイト経由ですと、各サービス内容の比較検討が容易に出来ますし、直接宿泊施設に申し込むよりも割引や特典があったりとお得感があります。
実際、ほとんどの宿泊施設が旅行予約サイトに登録している現状を考えますと、そちら経由でのお客様が圧倒的に多いのだと推察されます。
利用客の割合は、8:2くらいでしょうか?
ですので、ユーザー数や売上高で大きなウェイトを占めていると思われる、旅行会社・予約サイトからの申し込みを優先的に見ていきます。
この旅行会社・予約サイトの傾向を3つに分けたいと思います。
一つ目が大手の旅行予約サイト、二つ目が中小の旅行予約サイト、そして三つ目が電話対応のみの他の旅行会社です。
それぞれのユーザー利用数割合を、8:2:0と仮定します。この数字の根拠は、私の個人的経験からです。
例えば、ネットで旅行関係を検索しますと、通常大手の旅行予約サイトが1ページ目に出てきます。
コロナ禍以前はたびたび私も旅行をしておりましたが、調べている時に中小の旅行予約サイトを検索で見つけた事はほとんどありませんでした。
個人的にはちょっと残念な事ですが、検索の上位にヒットしないと、例え良いサービスを提供されていても、検討しようがありません。
そして、自前のウェブサイトがなく、電話対応のみの所も結構あるようです。その場合、申し込み前にサービス内容の事前検討が出来ないので、長い付き合いがあったりと特別な理由がない限り、一般的には気軽にお申込みはしづらい気がいたします。
以上の理由により、ほとんどのユーザーは大手旅行予約サイトを利用すると推察しました。
そしてそれらサイトを通して、交通費・宿泊費・食事代・アクティビティ代をまとめて申し込む事で、まとまった割引サービスが得られると理解しました。
とりあえずこのブレインストーミングのおかげで、GoToトラベルの利害関係者や、どのようにお金が使われているかの概観が見えてきました。
4.旅行・飲食業界の支援が目的の場合の考察
ここで1番目の『旅行・飲食業界の支援』が目的だった場合、『必要な支援が必要なところに届いているか』を考えてみましょう。
予約サイトにしても、宿泊先にしても、どこのサービスを利用するかは基本的にユーザーが決めますので、レビューの評価が高いところ、多い所に申込みが集まりやすいと思われます。
ですので、ネット配信力が強く、すでに評価のある大手・有名事業者は、GoToによる恩恵が大きいはずです。
ITビジネスでは特に『Winner takes all economy』、つまり富が一極集中しやすい傾向がありますので、小さなところ、ネット配信力が弱い事業者は不利だと考えられます。
今は非常時である事を考えますと、困っている業界への支援が目的であれば、GoTo事業がどこまで貢献できているかはちょっと気になるところです。
私が思うに、市場の競争原理に任せず、直接観光や飲食事業者の方に公平・迅速に支援金を渡す形にした方が、多くの人が助かる気がいたします。
それと、複雑な給付条件を設けないことも大事ですね。複雑になればチェックに時間がかかるなど、行政の事務処理コストが増えてしまいますし。
5.日本経済を回すことが目的の場合の考察
次に、2番目の『日本経済を回す』事が目的だったケースを考えてみましょう。
この場合、『実際に経済が回っているか』の検証が必要になりますので、まずは経済的恩恵を受けている業種や組織をリスト化してみます。
GoTo事業で直接的に恩恵を受ける業種は、交通・宿泊・飲食・小売・観光・ITとなります。
そして忘れがちですが、政治・行政も税金という形で恩恵がありますね。
これら業種については、皆さんご想像の通りかと思いますが、では国内旅行でどれだけのお金が動いているかはご存じでしょうか?
調べてみたところ、コロナ禍以前のデータで、海外からのインバウンドを含めない、国内旅行が占める経済規模はGDP比で約5%でした。ここの部分です。税金まで含めるのかは分かりません。
引用元:『日本の旅行消費額がGDPに占める割合は5%と低水準』
参考までに、製造業ですとGDP比20%を超えています。
引用元:『各国比較から見る日本の製造業の状況』『製造基盤白書(ものづくり白書)第2節』
ですので、私は当初想像していたよりも国内観光の経済規模は少ないなと感じました。
政府からは「GoTo政策を推進するんだ」という強い意志を感じますので、それだけ日本経済に影響があるんだろうと思っていたためです。
この5%の経済効果という点が、なぜ他の業種・産業には支援がないのか、という一つの議論を生みそうです。
また、コロナ拡散リスクを鑑みて、妥当なメリットとなっているかも論点となります。
個人的には、経済を回すという目的ならば、GDP比の高い製造業や、今需要の高いIT産業・医療分野に経済支援をもっと行ってもいいのかな?とは素朴に感じています。
ちなみに、もしデータなどに誤りがありましたら、訂正いただけますと助かります。
後、もちろんビジネスは取引先からいろいろな物を仕入れたり、卸したりの相互関係で成り立っていますので、間接的な経済効果についても考察してみましょう。
観光業・飲食業の方々はいろいろな業種と繋がっているのが、このリストからも分かります。
ですので、幅広い分野で効果が期待できるのは分かりました。
ただ、私がちょっと気になったのは、観光業・飲食業に落ちたお金が、取引先などに対し、いつ・どこに・どれだけ回るのか、という事です。
と言いますのも、この不況の状況下で、取引先などの間接的業種にまでお金が十分回っていくことは考えづらいからです。
私もそうですが、事業運営が厳しければ、増えるかどうかわからない売上を検討するよりも、まず仕入れやアウトソースのコスト削減を検討するのが基本的アプローチと思います。
以上のように考えますと、お金を給付するなら川の上流だけじゃなくて、下流も含め均等に給付する形にし、さらに一時的に消費税などを撤廃する事で、皆の消費意欲を喚起する形にすると、経済がスムーズに回り始めるんじゃないかと感じました。
6.考えられる改善案
これは予備的リサーチなので、ちゃんと調査・検証したわけではございませんが、必要な確認事項、可能性のある解決策についてまとめておきます。
最初に、目的が『観光業や飲食業への支援』であれば、GoTo推進の代わりに、直接観光業や飲食業の方に支援金を渡す形にするのが良いと思います。その際、公共事業にありがちな細かい給付条件を付けずに、平等・迅速に行います。これにより、支援対象の偏りも少なくなり、多くの事業者の方が救われると思います。
ただしこの場合、他の業種の方々から、なぜ自分たちには公的支援が無いのか、という議論は継続されるはずです。
そのため、当面の目的は達成されますが、おそらく別な問題が新たに浮上してきます。
次に、目的が『日本経済を回す・維持する』という事であれば、GoToによるGDP比5%の経済効果で十分かどうか、コロナ拡散リスクとのトレードオフが許容範囲内かどうかを確認します。
観光・飲食業に支援するならば、同時に、それ以外の業種にも資金を投入した方が良いのかなとは感じます。(国庫資金に全く余裕が無く、将来の世代に禍根を残しそうなら、逆に覚悟を決めてお金を使わないという選択肢もあるかもしれません)
理想を言いますと、国民の不公平感が出ないよう、期間を限定してベーシックインカムを導入するのが良いと私は思っています。
その場合、ただ給付するのではなく、一国のリーダーである総理大臣が、国民に対して気持ちを込めてメッセージを発することが大事です。
例えば、社会全体を守るための給付であること、そして経済を回すために貯金はせず、人々の生活を守るために使ってほしい、というようなメッセージを伝えます。
それが難しければ、コロナ問題が収まるまではせめて消費税を撤廃するなどの、少なくとも国民全員が恩恵を受ける形での政策が肝要かと思いました。
7.まとめ
以上となります。
GoToトラベルの目的から始まり、どのような検証が必要なのか、全体把握のブレインストーミング、確認すべき事項、そして考えられる対策についてお話ししました。
どんな仮説やストーリーでGoToが推進されているのか、あくまで推測の域は出ないのですが、どこが論点なのかは少しずつ見えてきたと思います。
データが全く足りないので、もう少し詳しく政治家の方に政策のご説明をしていただけますと、より建設的な意見も出しやすくなるはずです。
非常時だからこそ、国民が一体になって問題に向き合えるよう、選択と集中をベースにした政策には、慎重を期する必要があります。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!