マイナンバーなどの社会・金融サービスから見えてくるDX化のリスクとその対策とは?
皆さま、こんにちは
毎年4月から5月にかけては、年金・自動車税・サービスの利用料など、いろんな支払いがまとめて必要となる時期ですね。生きるだけでお金がかかるという事を認識させられます。
今回は、ここ2か月間を通して改めて感じた、世の中の社会・金融サービスについて、自分の考え(主に不満点から生じるリスクと対策)を書いてみたいと思います。
1.マイナンバーカードはいつ国民にとってメリットが見えてくるの?
まずは、マイナンバーカードについてです。2万円分のマイナポイントが得られるとして、多くの国民がマイナンバーカードを近年申請・取得したわけですが、これっていつになったら国民にとってメリットがはっきり見えてくるのでしょうか?
現時点ですと、システム上の不備で別人の銀行口座が紐づけられたり、マイナポイントが他人に付与されたり、マイナ保険証の誤登録、そして個人情報を他者によって閲覧されたりと、トラブルが相次いでいます。
それらの問題で、総務・厚労・デジタルの三大臣(つまり松本剛明・加藤勝信・河野太郎の各大臣)が陳謝したというニュースが、5月26日に流れました。私の偏見が入っている可能性もありますけれど、何か他人事のように見えます。本当に申し訳ないと思って謝罪しているのでしょうか?
国民全員を巻き込んで、そして多額の税金をかけて開発したシステムなのに、この体たらくです。まともなプロジェクト責任者であれば、普通事前にシステムが問題なく稼働するかどうかを検証してから、全国で導入するものでしょう。
どこの企業が請け負っているのか分かりませんけれど、オリンピックの時と同様、今後の命運を左右しかねない国家事業としてはちょっといい加減過ぎます。
少なくとも私でしたら、プロとして国や国民の利益を第一に考えますから、「一度全体のプロジェクトを自分にチェックさせてくれ」と言いたいです。戦略系のプロであれば、私の想いはおそらく理解できると思います。このままでは、本当に日本が潰れてしまいます。
結局、マイナンバーって元々国民の利益を第一にして作り出されたシステムでは無いから、政治家やお役所の都合が優先されているのでしょう。あくまで目的は、国民の資産を把握・管理する事にあり、利便性の向上は方便で二の次に過ぎないのだと思います。もし本当に国民の事を考えて始めた制度であれば、やれる事は沢山あるはずだからです。
例えば、マイナンバーカード導入によって多くの国民が期待している事は、行政システムの効率化ではないでしょうか?そうやってコスト削減を行った結果、浮いたお金を社会保障費や国防費に回せば良いのです。ただでさえ物価高騰で生活が苦しくなっているのに、これ以上の増税などは論外となります。もしこれが出来ないのであれば、国民の視点では何のためにマイナンバーを導入したのかよく分かりません。
ただ、それが簡単に出来ない理由も一応分かってはいます。例えば、過去に小泉元首相が郵政民営化を推し進めた時、関係者から大きな反発がありました。当時、国民からの高支持率が無かったら、成し遂げる事は出来なかったと思います。
皆、自分が努力して獲得した利権は手放したくないものです。でも、国全体が衰退している状況下においては、ある程度は妥協して諦めていただかないと、このままでは後戻りできなくなるほど深刻な社会問題に直面します。欧米の一部地域のように、凶悪な犯罪がいつも起きているような世の中に、日本はなってほしくありません。
去年の終わりごろ、平日にお役所に行って、両親のも含め半日かけてマイナンバーカードの申請手続きを行いました。現時点では、それだけの時間や労力をかけるだけの意味があったのだろうかと疑問に思います。マイナポイントがもらえるというメリットはありましたが、そもそもそれは元を辿れば国民の税金です。
システム構築にどれだけの費用がかかっているのか分かりませんけれど、トータルで考えますと、もらっているマイナポイントよりも支払っている税金の方がはるかに多い気がいたします。
いつになったら効果的運用がなされるのでしょうか?一般企業では普通、プロジェクトを始める時に「いつまでに何を実現する」という全体の工程表を出します。どんなメリットがあるのかよく分からない仕事をしていたら、普通は責任問題となるからです。
この制度が始まって随分経ちますから、本来であれば、国や県に関わる支払いやサービスの利用は、PCやスマホ上で一括管理できるようになっていなければなりません。
というか、いつも思うのですが、「いくら使っているのか?」、「その費用は適正なのか?」などをチェックする第三者機関って日本にはないのでしょうか?無ければ私が作りたいくらいです。
話が進まないのは、「システムの安全性が担保できないから」という理由からなのかもしれません。しかし、実際は安全性が云々というよりも、縦割り構造による利害関係者同士の利権争い(縄張り争い)が原因な気がいたします。
大臣の謝罪動画を見ていれば、問題の根源がどこにあるかは大体想像できるでしょう。自分のせいではないと誰も責任を取らないこと、そして縦割り構造による利権争いにある事はほぼ明白です。一々分析するまでもありません。
2.利便性と安全性を両立させる事は難しい
さてここからは、昨今の社会および金融サービスを見ていると、利便性があっても安全性が担保されていなかったり、または安全性があっても利便性を失ってしまったりと、デジタル化によってかえって余計な作業や心配事が増えてしまっている気がするので、私が体験した事例をご紹介したいと思います。
ちなみに、前段落のマイナンバーカードについては、国家プロジェクトとして推進しているにも関わらず、安全性・利便性の両面において疑問符が付きますので、現時点ではすぐにサービスを利用しようとは思いません。システムが安定してから再度検討するつもりです。
2-1.セキュリティ強化で不便になった銀行振込サービス
まずは、ここ数年間のセキュリティ強化で不便になった銀行振込について書きたいと思います。
私の使用している銀行は、地方では大きい方なのですが、以前は出来ていたPC上での銀行振込が、いつの間にか従来のやり方では出来なくなっている事に気づきました。
最後の振込手続きで、ワンタイムパスワードの入力を求められるのですけれど、パスワードを確認するためにはスマートフォンでログインする必要があります。しかし、スマートフォンでログインすると、PCの方は自動的にログアウトされてしまうので、PC上ではワンタイムパスワードの入力が出来ない仕様になっています。つまり、銀行振込も出来ないという事です。これには驚きました。そのため、せっかく入力した情報をスマートフォンで全て入れ直すはめになりました。
だったら、「これからはスマートフォンで振込をすれば良い」と、大した事無いように感じる人もいるかもしれませんが、これを数十万人規模でやり直し作業が発生していると考えてみてください。時間をお金で換算すれば、膨大な機会損失が生じている事になります。マクロ的に考えれば、セキュリティ強化を優先する事で手続きが煩雑となり、結果として日本の国際競争力を間接的に削いでいるとも言えます。
私の場合、もしどうしてもPC上で振込をしたい場合は、別途ワンタイムパスワードを生成するためのカード認証型トークンを申し込む必要があります。しかし、それはおそらく多くの人にとって現実的な解決策ではありません。ですから、当面は銀行関連のサービスはスマホを使う事になります。
銀行にとって、使用者のユーザビリティやお金の流動性を高める事が目的であれば、スマホでワンタイムパスワードを確認し、PC上での支払いが出来るよう、PCとスマホでの同時ログインを認めてほしいと思いました。
2-2.職業が変わってたまに決済が通らなくなったクレジットカード
次は、クレジットカードの支払い(決済)がたまに通らない事があるので、困っている件についてです。最初に一応言っておきますと、私はクレジットカードの支払いを滞らせたことは過去に一度もありませんし、利用限度額を超えているわけでもありません。
当初はその旨をクレジット会社に連絡して、制限を解除してもらっていたのですが、すぐに面倒くさくなったので、現在は可能な限り現金や銀行振込で支払うようにしています。もしそれが出来ない決済であれば、別のカードを使って対応するようにしています。
サラリーマン時代にはこんな事無かったので、おそらく、個人コンサルタントになって以降収入が不安定となり、信用照会が厳しくなったことが原因と思われます。
クレジット会社としては、リスクを減らして焦げ付きを極力少なくしたいのは分かりますが、その結果、一部の利用者の利便性が著しく損なわれています。せめて、支払いがキャンセルされた旨のお知らせがすぐに来れば良いのですが、自動更新契約をしている場合は、後から分かるケースもあるのでちょっと困ります。
相手との信用問題にも関わるので、個人的には使わなくて済むのであればそうしたいのです。しかし、特に海外などはクレジット払いしか受け付けないサービスがほとんどなので、私の方で事前確認するなどして対策を講じるほかありません。
現在会社員をされている方は、自分には関係ないと思うかもしれませんが、人生何が起きるか分かりません。自分でコントロール出来ないリスクが増えていますので、不測の事態に備えて、可能であればリスクは分散または減らしておくことをお勧めします。
ところで余談となりますが、最初に日本でクレジットカードビジネスを始めた人は、うまくやったと思います。例えばこれが『借金カード』という名前でしたら、サービスが浸透するまでには相当時間がかかったはずです。借金に拒否反応の多かった日本人に対し、『クレジット』という横文字を使って世間のネガティブな印象を薄めた事で、大成功を収めたのだと思います。名前の付け方一つで、ビジネスって大きく結果が変わるものですね。
2-3.ボタン一つで個人情報が抜かれたり、高額請求されたりするネットサービス
後は、逆に利便性が高まったために、安全性が損なわれているケースについてご紹介します。
皆さんも同じと思いますが、私のメールアカウントにも毎日スパムメールが大量に届きます。そういうものだと思って長年諦めていましたが、最近「おかしいんじゃないか?」と思うようになっています。
重要なメールを見逃さないよう、スパムとして振り分けされている受信ボックスの方も全てチェックするようにしています。ただ、そうやって今までに費やしてきた時間や労力を考えますと、「何で詐欺師のために毎日こんなことをしなければいけないのか?」と違和感を覚えてしまいます。
特に最近は、ボタン一つで個人情報を抜こうとする悪質なメールも多く、有名サイトや金融機関を名乗ったりしているケースもあるので、やり方が非常に巧妙になっています。
人を騙して金を奪おうとする行為には怒りを覚えますが、これだけスパムメールが多いという事は、詐欺師にとっては効果的なビジネスという事なのでしょう。現に知人のお話となりますが、届いたメールの中にあったボタンをうっかり押してしまって、高額な料金を請求されたことがあるそうです。
昔は、技術が発展すれば世の中便利になり、かつ安全になると思っていたのですが、残念ながら、逆に当時だったら起きないような犯罪が増えています。
問題なのは、誰を相手にしているのか、誰が悪党なのかが分からないという事で、本当の悪とは、こうやって表に顔を出さずに利益を得て、他人の不幸を笑っている人たちと思います。
ですから、マイナンバーシステムの導入で、世の中が少しはマシになると私は本当に期待しています。なぜならば、個人のネット利用とマイナンバーを紐づければ、成りすましなどがしづらくなり、セキュリティも向上しますし、アノニマスとして無責任な発言はしづらくなるので、情報のフィルタリングもしやすくなると思うからです。そのためには、個人情報を国にある程度管理されても仕方がないというスタンスです。なので、ちゃんと仕事をしてもらわないと困ります。
私が見たいのは、実名・顔出しで、責任を持って発言する人のサイトや動画となります。人の興味を引くためにわざと変なタイトル名を付けたり、薄っぺらな情報をマシンガンのように発信し続けるサイトやチャンネルではありません。メールだって、個人が特定されている方からのみ受け取りたいです。
AIで他人の成りすまし動画が作成できるようになっているため、社会的混乱が起きる前に、個人・ビジネス関係なく、一刻も早くネット利用はマイナンバーと紐づけすべきと思います。
これらは国家戦略のお話となりますので、国民や政治家が根本から意識変革をしていく事が最初のステップとなります。
3.お年寄りとのコミュニケーションで見えてくる本当の価値
以上の事例のように、世の中便利にしようとして危険に、そして、安全にしようとして不便になってはいないでしょうか?あっちを立ててはこっちが立たずでは、本末転倒です。
お年寄りはたまに、「何でそんな面倒な事するの?」と本質を付くような質問をする時があります。私も日常生活において、「その事に何の意味があるのか?」と思う時はやはりあります。
例えば、メタバースビジネスにしても、NFTビジネスにしても、一時期いろんなメディアで取り上げられ、持てはやされていましたが、今思うとあの騒ぎは何だったのでしょうか?
「なぜ実体の無いサイバースペース上の土地を、多額のお金で購入しないといけないのか?」、そして「なぜシンプルなイラストをNFTでわざわざ購入しないといけないのか?」と、非常に違和感があったのを覚えています。
当時、「私のビジネス感覚が世間とズレているのだろうか?」と心配になりましたが、単に企業側が大々的なプロモーションを行っただけのようですね。そのプロモーションに、利害関係のある多種多様な事業者が乗っかって、一大ムーブメントとなったのでしょう。
このように、ある商品やサービスが素晴らしいとメディアで紹介されても、実際には数か月~数年後にはごみ箱行きになるモノが沢山あります。商売として見れば、それでも良いという結論になるのかもしれませんが、SDGsやESGの観点から見ますと、限りある資源を有効活用しておらず、自然破壊を促しているようにも感じます。どうすればいいのでしょうね?
また、大手スーパーマーケットで食料品などを購入すると、自動精算機を使うように促されたりしますが、毎回親が操作しているのを見て思うのが、これは「顧客の利便性を第一に考えて開発されたわけでは無いな」と感じる事です。
おそらくは、売上データの収集・分析をしたり、店員による小銭紛失または盗難を防止したりと、お店側やビッグデータを収集したい企業側の都合によるものと思いました。
多くのお年寄りからすれば、従来のようにレジ係の人に全てやってもらった方がありがたいに決まっています。自分で機械を操作しなければいけないので、家の母親はちょっとしたストレスを毎回感じているようです。
私が思うに、本当に必要で、意味のある商品やサービスであれば、お年寄りも変化にうまく適応しようとします。もしお年寄りが拒否反応を示している場合は、一度その商品やサービスに何らかの課題が無いかどうか、見直してみる事も大事かもしれません。
4.シンプルイズベスト
これまでの考察の流れから、私は一つの仮説に辿り着きました。
それは、「社会システムはこのまま複雑化・高度化していくよりも、シンプル化を追求していった方が、人類の幸福のためには良いのでは?」という事です。
世の中、そんな複雑にする必要があるのでしょうか?新たなシステムがどんどん導入され、昔の九龍城のような雑多さ(カオスさ)を現代社会に感じます。そこにシンプルな洗練さはあまり感じられません。
今さら複雑さを追求したところで、先端技術の分野で先を行っている米国や中国にはそうそう追いつけるものではありません。そのためには、長期的な国家戦略の見直しが必要であり、短期的投資や個人のスキル習得だけでどうにかなるものでは無いと思います。
ですから、今日本が国際ビジネスで勝負するのであれば、他の国のやり方を真似するのではなく、逆に複雑さの中にシンプルさを見出し、日本文化の和で勝負していってほしいです。
これは、皆がすぐ実践できるものではありませんが、中にはやれる人もいます。そういう人の挑戦や行動には、世間で理解を示すようにしてほしいです。
毎日の小事に振り回されずに、人が有意義な人生を送るための、本質を突いた商品やサービス提案で世界をリードしていくのが、未来の日本の強みになっていくと感じています。
5.まとめ
今回は以上となります。
何か、日常生活での不満がメインとなってしまいましたが、デジタル化が進むほど、生活がしやすくなっているどころか、かえって不便になったり、安全性に配慮しなくてはならなくなったりしているからだと思います。
テレビなどを見ていると、グローバルで活躍される日本人は沢山いますが、大抵皆さん個人として名声を得ています。つまり、才能を持った人は沢山いるという事です。そこに、日本の国際競争力を高めるヒントがある気がいたします。
一方、世界を視野に新たなビジネスを展開されるような日本企業は、ここ10年間であまり聞いた事がありません。海外のウェブセミナーにも定期的に参加していますが、少なくともビジネスの分野において、日本の話題はほとんど出てこないです。
ただでさえ雑多極まる社会で、皆てんてこ舞いに生きているのに、これ以上DX(デジタルトランスフォーメーション)で複雑にしてどうするんでしょうか?
まずは、人にとって本当に大事なものをもう一度見直し、生きていく上で必ずしも必要でないものはとりあえず後回しにして、社会のシンプル化を目指すことが重要です。(これは技術の発展を諦めるとか、そういう意味では決してありません)
「シンプルに発展していく道があるのでは?」という提言です。
こういう事を言うと怒られそうですが、戦後日本が奇跡的に経済発展を遂げたのは、日本が戦争に負けて、何も無くなった所から始めたからだと思います。余計なしがらみが無かったからこそ、多くの起業家が生まれ、自由に発展出来たのでしょう。
現状それが中々出来ないから、日本は変化できずに苦しんでいるわけです。ゼロベースで物事を考えられるかどうかに全てがかかっています。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
戦略コンサルタント
味水 隆廣