戦略コンサルタントの意義とは?-未知の問題に直面した時に真価が問われる

皆さま、こんにちは

今回は閑話として、前回の売上やコストの推定時に、様々な仮定値、例えばレストランの広さ・料理の価格・光熱費などを設定しましたが、このような直感に基づくざっくりとしたやり方にあまり馴染みがない人も多いと思いますので、なぜ行うかの根本的理由をここで解説します。

通常、ジェネラリスト(総合家)である戦略コンサルタントは、業界や専門的な知識においてはクライアントに敵いません。そのため、コンサルタントは最初に基本的リサーチを行い、仮定に基づく計算を行います。その中で、課題解決に繋げるためにはどのようなデータが必要かをリスト化し、分析の精度を高めていきます。

戦略のプロである以上、全体を把握した上で、優先すべきポイントを絞り込んでいきます。特定分野に精通している専門家のように、最初からピンポイントで仮説を立てて、解決策の提案は出来ませんし、仮に出来たとしてもしません。

そのため、すぐに答えを出さない(出せない)戦略コンサルタントは、初期の段階でクライアントからマイナスの評価を受ける事もあります。

専門家と総合家で、立ち位置が異なるために生じやすい期待のミスマッチなので、特に過去の事例や現場経験を重視する一方で、理論や戦略を軽視しがちな方に読んでほしいです。

本内容について、もし何か気になる点がございましたらご指摘いただけますと助かります。

動画で見たい方は、下記のリンク先よりご覧ください。タイムスタンプ(34:36~38:33)で解説しています。

YouTubeチャンネル:
【集中講座7】売上とコストの推定-焼肉食べ放題レストランの新規事業を分析

また、文章で読みたい方は以下に内容を書き出します。

それでははじめます。

1.戦争を経験していなければ、戦略のプロフェッショナルではない?

極端なお話に聞こえるかもしれませんが、例えば私は戦争を経験していませんけれど、もし戦いを実際に経験していなければ、自身を戦略のプロフェッショナルと名乗ってはいけないのでしょうか?

1-戦略のプロフェッショナルとしてアドバイス

仮にそうであれば、第二次大戦後、戦争を全く経験していない日本には、戦いのプロフェッショナルが存在しない事になります。

しかし、皆さんご存知のように、現実にはそんなことはありません。プロになるためには、必ずしも実地経験が必要になるとは限らないからです。

(ただし、戦いにおいて現場経験はあった方が有利に事を運べるのは、言うまでもありません。そこは否定していないので、ご注意ください)

昔、「あんたは経験が不足しているから、コンサルタントを名乗ってはいけない」と、ある経営者の方との初日の顔合わせで言われたことがあります。自分の仕事を見てから評価されるならまだ分かりますが、会って15分くらいでそう言われてしまったので、今でもはっきり覚えています。

話をしていく内に、先方の態度も段々と変わっていきましたが、自分がどういう人間かは、特殊な能力でも持っていない限り、初見でお会いして分かる方はほとんどいないと思います。そんな薄っぺらい人生を送ってきたつもりはありません。

2.過去の事例が無くても、非常時にはベターな決断をする必要がある

例えば、日本が戦争に巻き込まれそうになった場合、または巻き込まれた場合、戦(いくさ)を経験した事が無いからと言って、重要な役職を任されているリーダーが「目の前の脅威に対して、(過去の事例が無いから)どうすれば良いか分からない」では済まされません。

2-どうすれば良いか分からずに慌てふためいている

誰かが情報を収集し、分析し、判断・決断をし、ベターな対応をしなくてはなりません。それは政治レベル・防衛レベル・社会レベル、地域レベル、そして一人一人の国民レベルで当てはまります。

3.経験が無ければ、訓練や努力で実力不足を克服すれば良い

もし現場の経験が無ければ、日頃の訓練や、その人個人の素質・努力によって克服すれば良いのです。

自衛隊も、そして大手の戦略コンサルティング会社も、そうやってプロフェッショナルを育成しています。

アメリカには、戦争の情報を収集し、分析する機関として、戦争研究所(Institute for the Study of War、通称ISW)というシンクタンクがあります。防衛と外交政策に関する問題についての調査と分析情報を提供しています。

そこで働いている人のほとんどは、実際には戦いを経験したことが無いはずです。しかし、彼らはちゃんとプロとして自身の責務を果たされています。

4.戦略コンサルタントは、状況に合わせて何らかの答えを出します

つまり、ここで私が言いたい事は、常に変化している状況下でも、そして過去に経験したことのない問題であっても、戦略コンサルタントは何らかの答えを出すという事です。

過去の事例や経験から学ぶことは非常に重要ですが、人生80年、一日24時間しか無い以上、人は何を学ぶかを選択しなくてはいけません。いろんな事を学びたい、経験したいと思っても、人生は短すぎてそれが出来ないのです。

そのため、たとえ最初は知識が不足して完璧な答えを導き出せなくとも、PDCAサイクルを回して、少しずつ課題解決の精度を高めていけば、それで良いと私は思っています。

5-PDCAサイクルを回す

「理論は必要ない、答えだけをすぐに教えてくれ」というご要望でしたら、残念ながら私はお役には立てないでしょう。そういうニーズは、これからの時代、人ではなくAIが担うと思っています。

5.まとめ

今回はこれで終わりにしたいと思います。閑話として、売上やコストを推定時に、なぜ様々な仮定値を設定するかの、その根本的理由をご説明しました。

戦略コンサルタントは、全体を把握した上で課題解決の方法を求めていきます。最初は必要なデータが手に入らない事も多く、仮定に基づく計算を繰り返して、クライアントの置かれている状況を理解していきます。

また、不足している現場の専門知識は、クライアントとの集中インタビューを通して補います。最初からいきなりピンポイントで仮説を立てて、解決策を模索する事はいたしません。なぜならば、想定外の理由で問題が生じている場合もあるからです。

そのような枠外の問題も把握し、分析し、解決策を模索しようとするのが、戦略コンサルタントとなります。命に関わるような実際の戦いにおいては、『想定外』という言い訳は許されないからです。

これが逆に、答えをすぐに知りたいクライアントからすれば、マイナス評価となってしまいかねない、というお話でした。

『どんなに素晴らしい商品やサービスであっても、それがクライアントの期待に沿っていなければ、価値は無いのと同じです』

本サービス内容がお客様のご期待に沿っているようでしたら、ぜひお問い合わせください。

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

漸コンサルティング
味水 隆廣