ネットワーク安定化プロジェクト1-接続環境の見直しとWi-Fiルーター・LANケーブルの選定【備忘録】
皆さま、こんにちは
今回は、ネットワーク安定化プロジェクトと題して、最近不調が続いている自宅のネット環境を、少しずつ改善していく様子をご紹介したいと思います。
前回の『ネット接続が不安定になっている理由を戦略的に考えてみる』では、ネットに繋がりにくい要因を以下の通り洗い出しました。
- 電波干渉
- ネットワーク機器の経年劣化
- ソフトウェアのバグ
- 二重ルーター
- ネットワーク機器の熱暴走
その中で、家の状況と照らし合わせて考えてみますと、『ネットワーク機器の熱暴走』が一番可能性の高い原因であると分かりました。
その理由は、2階の屋根裏は換気が悪くて、夏場に温度・湿度が上昇しやすく、そこに設置しているホームゲートウェイ(PR-500MI)が動作不良を起こすのは当然と考えられるからです。マニュアルにも注意事項として記載されています。
よって、ホームゲートウェイの設置場所を隣の部屋などに移動させれば、問題は解決するはずですが、現実にはそうは簡単に問屋が卸しません。なぜならば、屋根裏奥の壁から引き込んでいる電話線があまりに短すぎるからです。自分で配線し直す事は出来ないので、ドコモショップに行って解決方法を相談する必要があります。
このように、熱問題の解決は時間がかかりそうな現状を踏まえ、先に自分で対処可能な問題に取り組む事といたしました。
それは、『ネットワーク機器の経年劣化』です。新しくWi-Fiルーター・LANケーブルを購入し、既存のものと交換します。これによって、ハード的要因およびソフト的要因で生じる潜在的問題を解決します。その際、『二重ルーター』の問題もついでに解決しておきます。
原因究明のプロセスについて詳しく知りたい方は、前回の記事で取り扱っているので、そちらをご覧ください。本記事では、問題解決のためにどのような事前準備をして、リサーチや検証をしていくのか、そして、その過程を経て新たに購入するWi-FiルーターやLANケーブルを絞り込んでいきます。
前回の記事同様に、戦略の専門家として話を進めていきます。
1.既存ネットワークの修正案を作成
まずは、当初のネットワーク構成および機器の配置を再確認しておきます。(画像をクリックすると、拡大表示されます)
注:ルーターのデータ転送速度は実効値(スループット値)です。
そして、最終ゴールとして構築したいネットワークイメージは、以下の通りとなります。
注:あくまで見直し当初の素案です。
しかし先に述べた通り、ネットワーク機器の熱暴走問題をいきなりは解決出来ません。よって、完成までの繋ぎとして暫定案を作成し、少しでも既存ネットワークの改善を試みます。
とりあえずは、以下のようなネットワーク構成、機器の配置を考えてみました。
ここでのポイントは、古い無線LANルーター(WG1200HP)を中継機として使用する事です。そうしますと、ごちゃごちゃしているLANケーブルを綺麗にまとめる事が出来ます。「部屋の扉をちゃんと閉めたいから、長ったらしいケーブルを何とかしてほしい」という、母親からの要望を考慮しました。
問題は、赤い部分のWi-FiルーターとLANケーブルをどうするか?となります。
2.購入するWi-Fiルーター・LANケーブルの要件を策定
そこで、どのようなWi-FiルーターおよびLANケーブルが自宅には適しているかを、前回の考察記事と見出し1で示したネットワーク構成・配置図を参考に、要件としてまとめてみます。
2-1.必要なWi-Fiルーターの要件をリスト化
安定したネット接続を実現する無線LANルーターの要件は、以下の通りとなります。
- 新しいルーターもNEC製であること
- 既存ルーター(WG1200HP)との相性問題を避けるため
- 2020年~2023年の間に発売したルーターであること
- 経年劣化による動作不良の可能性を避けるため
- メーカーによるサポート期間を出来るだけ長くするため
- Wi-Fi中継機能を有していること
- 一台では家全体をカバーできないため
- 新しい無線LAN規格であるWi-Fi6に対応していること
- 5年以上の長期使用を想定しているため
- 注:ただし、現在対応している子機は持っていない
- 最新のファームウェアに自動アップデートできること
- 新しいセキュリティ規格であるWPA3に対応していること
- 注:ただし、現在対応している子機は持っていない
- アンテナは4つ搭載していること
- 壁や床などの障害物に強く、電波を遠くまで届きやすくするため
- オートチャネルセレクト機能が付いていること
- 電波干渉を少なくするため
- マルチコアCPUを搭載していること
- 5GHz帯と2.4GHz帯の同時高速通信が可能となるため
- IPv6通信対応であること
- 混雑のない通信プロトコルで、安定したデータ通信が可能となるため
- ビームフォーミング対応であること
- 電波を集中的に照射する事で、より繋がりやすくなるため
- 360度まんべんなく安定した通信が行えること
- ユーザーから十分高い評価を得ていること
- スペック上の性能だけでなく、実際の動作安定性も重視しているため
2-2.必要なLANケーブルの要件をリスト化
次に、通信の安定化に必須となるLANケーブルの要件をまとめます。
- 長さは短めで、取り回しがしやすいこと
- ケーブルを極力床に這わせるのを避けるため
- 1Gbpsの通信速度であること
- 光回線の契約が1Gbpsのため
- 伝送帯域は100MHz(出来れば250MHz)以上であること
- より安定したデータ通信を実現するため
- 爪折れ防止機能が付いていること
- 爪折れによるケーブルの脱落を防ぐため
- 価格が安いこと
- あくまで暫定のネットワーク構成で使用する目的のため
- 古いケーブルを使う場合は、使用期間が10年未満で、傷や劣化が見られないこと
- 安定して高速なデータ通信を行うため
3.既存のルーターおよびLANケーブルの仕様を確認
普通は、見出し2でまとめた要件を考慮しながら、適合している(と思われる)ネットワーク機器および機材をいくつかピックアップしてみるのですが、その前に、現状のWi-FiルーターやLANケーブルがどれほどそれら要件を満たしているのか、念のために確認してみます。
なぜかと言いますと、仮に要件が満たされていなくとも、置かれている状況によっては、予算などの都合でそのまま使い続ける、という選択肢も現実にはあるからです。
3-1.既存Wi-Fiルーター(WG1200HP)の仕様と評価
以下の表に、今使っているWi-Fiルーター(WG1200HP)の仕様と、その評価をまとめます。
Aterm WG1200HP | 要件を満たしている? | |
メーカー | NEC製 | 〇 |
発売日 | 2015年1月 | × |
参考価格 | 5,500円前後 | Nil |
無線LAN規格 | Wi-Fi 5(11ac) | × |
利用用途 | 親機・子機・中継機 | 〇 |
アンテナ数 | 2×2(5GHz帯) 2×2(2.4GHz帯) | × |
無線LAN伝送速度 | 867Mbps (11ac/5GHz帯) 300Mbps (11n/2.4GHz帯) | Nil |
無線LAN実効速度 | 約462Mbps | Nil |
有線LAN伝送速度 | 1Gbps | Nil |
有線LAN実効速度 | 約940Mbps | Nil |
メッシュ中継機能 | 無し | Nil |
OFDMA | 無し | Nil |
MU-MIMO | MIMOのみ | Nil |
ビームフォーミング | あり | 〇 |
オートチャネルセレクト | あり | 〇 |
バンドステアリング | 無し | Nil |
QoS | 無し | Nil |
ハイパワーシステム | 一応あり | △ |
ワイドレンジアンテナ | 一応あり | △ |
IPv6 | 無し | × |
マルチコアCPU | あり | 〇 |
自動バージョンアップ | あり (最終更新は2019年) | △ |
WPA3 | 無し | × |
TWT | 無し | Nil |
ホームネットワークリンク | 無し | Nil |
ネットワーク分離機能 | あり | Nil |
ユーザーからの評価 (価格.comサイトより) | 3.71点 (2023年10月12日時点) | △ |
最初に、要件を満たしている(〇印)項目に着目しますと、NEC製で、中継・ビームフォーミング・オートチャネルセレクト機能があり、マルチコアCPUを搭載しているという点が挙げられます。
そして、一部要件を満たしている(△印)項目に注目すると、ハイパワーシステムやワイドレンジアンテナ機能は部分的に対応しており、自動バージョンアップ機能も一応は対応しています。しかし、ソフトウェアの更新は2019年以降行われていません。それと、価格コムサイトのユーザー評価は3.71点と、少し微妙な点数となっています。
後は、要件を満たしていない(×印)項目に注目すると、ルーターの発売日が2015年と古すぎる点、無線LAN規格が一世代古いWi-Fi 5(11ac)という点、アンテナ数が2本のみという点、そしてIPv6やWPA3に対応していない点が当てはまりました。
ファームウェアの更新がすでに止まっているという事が、動作の安定性およびセキュリティの面で、このまま使い続けるのが難しいと言えます。ユーザー評価があまり高くないのも気になりますね。ネット接続が途切れるというレビューもありましたので、もしかしたら、私だけが経験していた問題ではなかったのかもしれません。
ネット接続の安定性・セキュリティ・将来性の観点から、要件を一部しか満たしていないという状況は、大きな懸念事項と判断します。したがいまして、Wi-Fiルーターを新しいものに交換するという判断は、十分妥当に思います。
3-2.既存LANケーブルの仕様と評価
次に、現在使用しているLANケーブルの評価に移ります。意外と見過ごされがちな部分で、ケーブルの仕様や状態を確認せずにそのまま使っていると、いつの間にか通信速度や安定性向上のボトルネックとなっている場合があります。
既存ケーブルの仕様 | 条件を満たしている? | |
カテゴリー | Cat5e | 〇 |
使用期間 | 10年以上(少なくとも) | × |
ケーブル長 | 約30m | Nil |
通信速度 | 1Gbps | 〇 |
伝送帯域 | 100MHz | 〇 |
通信規格 | 1000BASE-T | Nil |
ケーブル構造 | 単線(おそらく) | △ |
ケーブル形状 | スタンダード | △ |
爪折れ防止機構 | 無し | × |
シールド保護機能 | 無し(UTP) | Nil |
ケーブル結線 | ストレート | Nil |
備考 | RJ-45コネクターに経年劣化が見られる | × |
まず、上の表から要件を満たしている(〇印)項目は、カテゴリー・通信速度・伝送帯域となります。通信性能は特に問題は無さそうですね。
そして、一部要件を満たしていない(△印)項目に注目すると、ケーブル構造が単線である点と、ケーブル形状がスタンダードである点が該当します。なぜならば、単線構造のスタンダードケーブルは、高速で安定した通信が可能となる一方で、ケーブルが固く、取り回ししづらいからです。使いやすさも重視しているので、三角の評価となります。
そして、要件を満たしていない(×印)項目に着目すると、LANケーブルの使用期間が10年を超えている点、爪折れ防止機構が付いていない点、そしてRJ-45コネクターに経年劣化が見られる点が当てはまりました。
すでに10年以上使用しており、コネクター部分にも劣化が見られ、かつ今回は短い距離を配線するだけなので、取り回しがしやすいケーブルにこの際交換してしまった方が良いと判断します。
4.用語の説明(補足)
前の見出し3では、見慣れない専門用語が沢山出てきました。そこで、このセクションではそれら用語の解説を行います。本記事は備忘録という性質も持っているため、Wi-FiルーターやLANケーブルなどにある程度詳しい方は、このセクションは読み飛ばしていただいても問題はありません。
4-1.Wi-Fiルーター関連でよく使われる基本用語
まずは、Wi-Fiルーター関連でよく使われる基本用語についてまとめます。
『ルーターとは?』
光回線契約時に、ドコモなどの通信キャリアからレンタルするONU(Optical Network Unit、通称光モデム)は、それ単体では1台のパソコンとしかネット接続できません。つまり、言い換えますと、一台のPCをLANケーブル接続で使うだけであれば、ルーターは特に必要ないという事になります。
しかし、ネット黎明期の頃ならまだしも、現代においてはスマホ・プリンター・家電など、沢山の端末をインターネットに繋げています。それら複数の端末を、一本の光回線で常時ネット接続できるようにするのがルーターとなります。
ルーターは、ONU(光モデム)と端末(PCやスマホ等の子機)の間に設置する必要があり、光回線を使うのであれば、必須のネットワーク機器になっています。
『Wi-Fi 6(11ax)とは?』
Wi-Fi 6(11ax)は新しい無線LAN規格で、従来のWi-Fi 5(11ac)等と比べ、『スピードの向上』だけでなく、電波が混みあっている状況下でも『つながりやすい』ように策定された規格となります。
以下は、無線LAN規格の今までの流れを表でまとめたものです。
無線LAN規格 | Wi-Fi 4 (IEEE802.11n) | Wi-Fi 5 (IEEE802.11ac) | Wi-Fi 6 (IEEE802.11ax) |
開始年数 | 2009年~ | 2014年~ | 2019年~ |
対応周波数 | 5GHz帯 2.4GHz帯 | 5GHz帯のみ | 5GHz帯 2.4GHz帯 |
つまり、このWi-Fi 6(11ax)では、5GHz帯と2.4GHz帯の両方で、通信の安定性向上が図られているという事になります。
(今まさに自分が求めている機能なのですが、ただ、持っているPCはWi-Fi 6(11ax)には対応していないので、現状では恩恵がありません……)
高速化や繋がりやすさを実現するため、次の四つの技術が使われています。
一つ目は、通信帯域を利用して、一つの通信で同時に複数台の端末とコミュニケーションできるようにする技術、『OFDMA(直交周波数分割多元接続の略)』です。
そして二つ目は、空間の多重(Multiple)によって同時通信を実現する、『MU-MIMO(マルチユーザー、マルチ入力・マルチ出力の略)』となります。
以上の二つの技術(OFDMAとMU-MIMO)は、簡単に言えば、繋がりやすさなどの通信の安定性および効率に大きな効果があります。
(時分割とか周波数分割とか、それら通信技術を学んでいた大学時代を思い出しました)
三つ目は、通信帯域を2倍、つまり80MHz(Wi-Fi 5)から160MHz(Wi-Fi 6)に拡大する事で、通信の混雑解消と速度向上の両方の効果を狙った、『ワイドバンド』技術となります。
最後の四つ目は、Wi-Fi 6との組み合わせによって、特に2.4GHz帯の大幅な速度向上が見込める『1024QAM』技術です。
補足:そもそも、「QAM(Quadrature Amplitude Modulation)って何ぞや?」という話になるのですが、これはアナログやデジタルデータ、もしくは電波や電気信号の間で相互に変換を行うための変調方式の一つとなります。位相が直交する二つの波を合成して搬送波(Carrier Wave)とし、それぞれに振幅変調(Amplitude Modulation)を施して情報を伝送する技術です。ちなみに、ラジオのAM放送も、この振幅変調方式を使っています。(とうに理論は忘れているので、何を言っているのか自分でもよく分かってはいませんけれど)
つまり、後の二つ(ワイドバンドと1024QAM)は、主に通信スピードの向上に大きな効果を発揮する技術となります。
『TWT(Target Wake Time)とは?』
スマホなどの端末側の待機時電池消費を抑える機能です。バッテリー消費を少しでも抑えたい場合は、活用すると良いでしょう。
『QoS(Quality of Service)とは?』
端末ごとに通信の優先順を設定する事ができる機能です。テレワークやオンライン学習などで通信の安定性が求められる際は、設定しておくと良いかもしれません。
『バンドステアリング機能とは?』
スマホやPCなどの端末ごとに、5GHz帯と2.4GHz帯どちらの帯域を使った方がより適切かを、自動で判断して振り分けてくれる機能です。
『オートチャネルセレクト機能とは?』
電波の混み具合を察知して、より良い状況のチャネルへと自動で切り替えてくれる機能です。
上記二つの機能(バンドステアリングとオートチャネルセレクト)を活用する事により、ネット接続の安定性が向上しやすくなります。
『マルチコアCPUとは?』
二つ以上のコアを持つCPUを搭載する事で、5GHz帯と2.4GHz帯、両方の電波を並行して処理し、通信を高速化できます。
『ワイドレンジアンテナとは?』
360度にまんべんなく電波を放射するアンテナです。
『ハイパワーシステムとは?』
これは、NEC独自の回路設計やチューニングによって、電波を広範囲に拡大させる技術の事を言います。ワイドレンジアンテナとの組み合わせで、より繋がりやすいWi-Fi環境を実現できます。電力を増やして電波を広範囲に放射するという意味ではありません。
『メッシュ中継機能とは?』
この機能を持った親機と中継器同士で接続しますと、一つの大きなネットワークを形成できます。普通の中継機能と何が違うかと言いますと、例えば部屋の間を移動している最中でも、自動で電波状況の良い方へ切り替えてくれるので、常に安定した通信を確保できるという点です。ただし、メッシュ中継機能付きの無線LANルーターとなりますと、現状では選択肢が限られます。機器同士の相性問題もあるようで、まだ発展途上の技術と言えます。
『Wi-Fiデュアルバンド中継機能とは?』
そこで、今回は上記のメッシュ中継機能は使わず、その代わりに、新しいWi-Fiルーターを購入した際、古いルーター(WG1200HP)を暫定的に普通の中継機として使います。安定した通信という面ではメッシュ機能に劣りますけれど、汎用性の高さや設定のしやすさという点では分があります。
『ビームフォーミングとは?』
集中的に電波を照射し、比較的離れた端末にも繋がりやすくします。
『アンテナ数の違いとは?』
Wi-Fiの通信速度や安定性は、主に無線LANルーターの『通信規格』と『アンテナ数』に依存します。したがって、この2点を考慮に入れつつ、ルーターを選ぶことが大事です。アンテナの本数で最大転送速度(理論値)は変わりますので、単純にアンテナの数が多いほど、通信は高速化し、より遠くまで電波が届くと考えて良いでしょう。ですから、通信規格であれば現時点で最新のWi-Fi 6を選び、そしてアンテナが多く搭載されている製品を、価格と照らし合わせながら選択すれば良いと思います。
『2.4GHz帯の周波数特性とは?』
この2.4GHz帯の周波数は、回折性(回り込み特性)があります。したがって、壁や扉などの障害物があっても、遠くまで電波が届きやすいという特長があります。一方、弱点としては、古いネットワーク機器は2.4GHz帯にしか対応していない事が多く、回線が混雑しやすい点でしょうか。電波干渉が起きて通信速度が低下しやすいので、高速通信には基本向いていません。
『5GHz帯の周波数特性とは?』
逆に、この5GHz帯の周波数は直進性が強いという特性があります。高速で安定した通信が可能で、かつ電化製品からの電波干渉を受けにくいという特長があるのですが、弱点として、壁などの障害物の影響を受けやすくなるため、電波の届く範囲は狭くなります。
『IPv6とは?』
インターネット上の住所であるIPアドレスの方式(通信プロトコル)の一つで、このIPv6は現時点で最新の方式となります。対応しているインターネットサービスプロバイダーや通信機器を利用していれば、従来のIPv4と比べネット上での混雑が少なくなりますので、安定した高速通信が可能となります。
『リモートワークWi-Fi(ネットワーク分離機能)とは?』
プライベートで使うネットワークと、仕事や学習で使うネットワークを分ける事が出来る機能です。テレワークやオンライン学習が当たり前になっている昨今、この機能は重要になっています。その理由として、ネットワークを分離することで、ウイルス感染などが起きた場合でも、被害の拡大を抑えることが可能になるからです。家で仕事をする際の、一つのリスク管理手法と言えます。
『WPA3とは?』
2018年に策定された新しい暗号化規格で、WPA3は従来のWPA2よりもセキュリティが強固になっています。しかし、安全性が高まったのは良いのですが、対応していない電子機器は現在でも多く、例えば、スマホのOSですとAndroid 9以前は対応していません。もしWPA3-SAE(AES)を使えない場合は、次に安全性の高いWPA2-PSK(AES)を利用する事になります。それ以外の暗号化規格、WEP・WPA・WPA2-PSK(TKIP)などは、すでに古くなっているので、セキュリティの面から極力使わない方が良いでしょう。
『実効速度とは?』
その名の通り、実効速度とは理論上の最大速度ではなく、実際にネットを使ったときに出るスピードの事を指します。例えば、1Gbpsの光回線に契約していても、実際に1Gbpsで通信出来るわけではありません。プロバイダーやネット環境によっても異なってくるでしょうが、実効速度は150~300Mbpsくらいが一つの目安となります。
4-2.LANケーブル関連でよく使われる基本用語
次は、LANケーブル関連でよく使われる基本用語についてまとめます。
『LANケーブルとは?』
LAN(Local Area Network)ケーブルは、インターネットへ有線で接続する際に必要となるケーブルです。PCなどをモデムやルーターに繋げて使います。通信速度・周波数によりカテゴリー分けされており、性能には違いがあるので、用途に適したケーブルを選びます。
『カテゴリーとは?』
LANケーブルはカテゴリーと呼ばれる規格で分類されており、カテゴリーの数字が高くなるほど通信速度は速く、伝送帯域は広くなります。例えば、1Gbpsの光回線サービスを利用するのであれば、それと同等以上のLANケーブルを選ぶ必要があります。
代表的なLANケーブルの性能を、以下の表でカテゴリー別にまとめてみます。
カテゴリー | 通信速度 | 伝送帯域 | 規格 |
Cat7A | 10Gbps | 1000MHz | 10G BASE-T |
Cat7 | 10Gbps | 600MHz | 10G BASE-T |
Cat6A | 10Gbps | 500MHz | 10G BASE-T |
Cat6 | 1Gbps | 250MHz | 1000 BASE-T |
Cat5e | 1Gbps | 100MHz | 1000 BASE-T |
Cat5 | 100Mbps | 100MHz | 100 BASE-TX |
家庭用の光回線で使うのであれば、赤字部分のCat5e・Cat6・Cat6Aあたりで十分かと思います。
『LANケーブルの形状とは?』
LANケーブルの形状には、スタンダード・細径(スリム)・フラット・巻き取り式・金属・PoEなど様々あります。普通は、スタンダード・スリム・フラットタイプのいずれかを選ぶ事になるでしょう。
ただし、家庭用であっても、配線距離が10メートルを超える場合は、ノイズに比較的強く安定した通信が可能な、スタンダードタイプ一択となります。
ちなみに、PoEとは電力供給が可能なLANケーブルとなります。ネットワークカメラなどでよく使われます。
補足:配線距離が100メートルを超える場合は、LANケーブルではなく、光ファイバーケーブルを使用します。
『LANケーブルの構造とは?』
LANケーブルの内部には、8本の銅線(芯線)が入っています。
『単線構造』の場合は、そのまま8本の太い銅線(芯線)がケーブルの中に入っている事になります。ですので、10メートル以上の距離を配線する必要があったり、高速で安定した通信を優先したりする場合は、単線構造のケーブルを選ぶようにします。難点は、ケーブルが固くて取り回ししづらい事です。スタンダードタイプには単線のものもあります。
一方、『より線構造』の場合は、1本の芯線内に非常に細い銅線が7本入っている構造になります。5メートル以下の短い距離だったり、取り回しやすさを優先したりする場合は、より線を選んだ方が適切と言えます。ただし、単線構造のケーブルよりも通信の安定性は落ちます。スリムやフラットタイプを選んだ場合は、大抵こちらです。
『UTPケーブルとは?』
UTPケーブルとは、Unshielded Twist Pair cableの略で、LANケーブル内部がシールドで保護されていません。つまり、ノイズへの耐性はあまり高くないという事ですが、家庭や企業で普通に使う分には問題ありません。
『STPケーブルとは?』
STPケーブルとは、Shielded Twist Pair cableの略で、ケーブル内部がアルミ箔で保護されたLANケーブルとなります。ノイズへの耐性を高めているので、通信の安定性が高まります。外部からのノイズを防ぐというより、ケーブル自体から輻射されるノイズを抑制する目的で採用されます。カテゴリー7以上になると、このSTPケーブルが基本となります。
補足:外部からのノイズを遮断したいのであれば、鉄管などで覆うのが確実な方法です。
『金属外皮ケーブルとは?』
金属外皮ケーブルとは、その名の通り外皮が金属で覆われているLANケーブルの事です。例えば、ネズミが出るような場所での使用や、飼っているペットがケーブルを噛む可能性がある場合は、断線を防止するために使われることがあります。
『爪折れ防止ケーブルとは?』
コネクター部分の爪が折れにくい構造となっているLANケーブルとなります。爪が折れてしまうと、ケーブルが固定できなくなってしまうため、基本この機能の付いたケーブルを選んだ方が良いでしょう。
『伝送帯域とは?』
LANケーブルの通信性能は伝送帯域(周波数帯域)で決まります。伝送帯域が広い(データを送る際の周波数の幅が広い)ほど、データを短時間で沢山送る事ができます。つまり、通信速度がその分上がるという事です。
参考:『【2023年版】LANケーブルの選び方』より
5.購入候補となる製品を比較検討
見出し2では必要となる要件をまとめ、そして見出し3では現在使用しているWi-FiルーターとLANケーブルの仕様を確認・評価を行いました。
これだけ下調べを行えば十分かと思いますので、今回の要件に適合している(と思われる)ネットワーク機器および機材をいくつかピックアップして比較・検討してみます。
5-1.Wi-Fiルーターの検討
まずは、Wi-Fiルーターからです。
検討当初は5機種くらい候補があったのですが、本記事では説明を簡単にするため、以下の2機種に絞り込んで考えます。
WX5400HP | WX3600HP | |
メーカー | NEC製 | NEC製 |
発売日 | 2022年2月 | 2021年6月 |
参考価格 | 17,000円前後 | 15,000円前後 |
無線LAN規格 | Wi-Fi 6(11ax) | Wi-Fi 6(11ax) |
利用用途 | 親機・子機・中継機 | 親機・子機・中継機 |
アンテナ数 | 4×4(5GHz帯) 2×2(2.4GHz帯) | 4×4(5GHz帯) 4×4(2.4GHz帯) |
無線LAN伝送速度 | 4804Mbps (11ax/5GHz帯) 574Mbps (11ax/2.4GHz帯) | 2402Mbps (11ax/5GHz帯) 1147Mbps (11ax/2.4GHz帯) |
無線LAN実効速度 | 約1853Mbps | 約1627Mbps |
有線LAN伝送速度 | WAN: 1Gbps LAN: 1Gbps | WAN: 2.5Gbps LAN: 1Gbps |
有線LAN実効速度 | 約930Mbps | 約930Mbps |
メッシュ中継機能 | あり | 無し |
OFDMA | あり | あり |
MU-MIMO | あり | あり |
ビームフォーミング | あり | あり |
オートチャネルセレクト | あり | あり |
バンドステアリング | あり | あり |
QoS | あり | あり |
ハイパワーシステム | あり | あり |
ワイドレンジアンテナ | あり | あり |
IPv6 | あり | あり |
マルチコアCPU | 2コア 1.0GHz(PKG) | 2コア 1.35GHz(PKG) |
自動バージョンアップ | あり | あり |
WPA3 | あり | あり |
TWT | あり | あり |
ホームネットワークリンク | あり | あり |
ネットワーク分離機能 | あり | あり |
ユーザーからの評価 (価格.comサイトより) | 4.30点 (2023年10月26日時点) | 3.84点 (2023年10月26日時点) |
参考:『Wi-FiルーターのCPU・メーカー別一覧(2023年8月更新)』
2.4GHz帯のアンテナ数で見ますとWX3600HPの方が4本と優れています。しかし、ユーザーからの評価を見ますと、4.30点とWX5400HPの方が優れています。
さらに詳しく見ていくと、有線LANの伝送速度やCPU動作周波数の違い、メッシュ中継機能の有無などがありますが、ただ、それらの項目は機種選定時の要件には入っていませんので特に重視はしません。
どちらもほぼ全ての要件を満たしているため、正直どっちのWi-Fiルーターでも良かったのですが、ユーザー評価が高かった点、そして購入当時に価格差が縮まっていた点を考慮し、私はWX5400HPを注文しました。
5-2.LANケーブルの検討
次は、LANケーブルを見ていくわけですが、たまたまダイソーに寄った時にカテゴリー6Aのケーブルが安く売っているのを発見したので、それを購入しました。300円という価格を考えますと、わざわざ他の製品と比較検討をする必要はないと感じたからです。
ケーブルの仕様 | 条件を満たしている? | |
カテゴリー | Cat6A | 〇 |
使用期間 | 新品 | 〇 |
ケーブル長 | 5m | Nil |
通信速度 | 10Gbps | 〇 |
伝送帯域 | 500MHz | 〇 |
通信規格 | 10G BASE-T | Nil |
ケーブル構造 | より線 | 〇 |
ケーブル形状 | フラット | 〇 |
爪折れ防止機構 | あり | 〇 |
シールド保護機能 | なし(UTP) | Nil |
ケーブル結線 | ストレート | Nil |
備考 | 特になし | Nil |
要件は全て満たしており、実際の使用も特に問題はありませんでした。これで十分です。
6.暫定のネットワーク構成が完成
このように、様々な検討を経て、暫定のネットワーク構成が以下のように完成しました。赤字で示された部分が、今回の変更箇所となります。
注:ルーターのデータ転送速度は実効値(スループット値)です。
ネット接続が不安定となる根本問題はまだ解決出来ませんが、少なくともこの構成により、家全体に電波が届くようになりました。それと、今回購入したWi-Fiルーター(WX5400HP)に直接無線接続する事で、インターネット速度の向上も体感できました。
7.まとめ
以上、ネットワーク全体の見直し、および要件に基づく製品の選定はここまでとします。
今回購入したのは、NEC製のWi-Fiルーター『Aterm WX5400HP』と、ダイソーで販売しているカテゴリー6AのフラットLANケーブルです。
なので、次回は、その購入したWi-Fiルーターをレビューしていきたいと思います。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
おわり
8.ご購入はこちらからも出来ます
『NEC Aterm 無線LAN WiFi ルーター Wi-Fi 6 (11ax) AX5400HP 6ストリーム (5GHz帯 / 2.4GHz帯)』
『NEC Aterm 無線LAN WiFi ルーター Wi-Fi 6 (11ax) AX3600HP 4ストリーム (5GHz帯 / 2.4GHz帯)』
注:上記リンクの『AM-AX5400HP』は『PA-WX5400HP』、そして『AM-AX3600HP』は『PA-WX3600HP』と同等商品です。
アマゾンの商品説明ページより抜粋
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