【集中講座2】財務知識の基本-ファイナンス業界のキャリアパスと資本市場
皆さま、こんにちは
今回は、第二回目の集中講座としてファイナンス、つまり財務や金融業界においてどんなキープレイヤーがいて、どのようなキャリアパス、または仕事の選択肢があるのか、そして資本市場との関係性について全体を解説してみたいと思います。ファイナンスという分野がいかに広大で、奥深いかが分かると思います。

重要な事といたしまして、財務・金融の専門家だからと言って、その分野について全てを理解しているわけではありません。必ず何かのカテゴリーに特化した、プロフェッショナルとなります。
例えば私もそうで、自分の経営戦略に役立つ事を前提に、財務の専門知識を活用しています。ですから、当方がご提供しているサービスも、ファイナンスという巨大なカテゴリーのごく一部に過ぎない事をご理解ください。
株式投資などをしない方でも、これからの世の中、基礎知識として知っておいた方が良いと思いますので、本記事がお役に立ちましたら幸いです。もし間違った内容が含まれておりましたら、ご指摘いただけますと助かります。
動画で見たい方は、下記よりご覧ください。
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また文章で読みたい方のために、以下に内容を書き出します。
それでははじめます。
1.ファイナンス業界のキープレイヤー
まず、ファイナンス業界にはいくつかのキープレイヤーが存在します。
すぐに思いつくのが銀行ですね。そして公認会計士事務所、機関投資家、後は企業と分ける事ができます。

プライマリーな市場取引においては、銀行は“Sell Side”、つまり売る側となり、機関投資家は、“Buy Side”、つまり買う側になります。新聞などでよく見るファンドマネージャーという方々は、証券取引所を通さない一次市場においては、株式や債券を企業から買う側となります。
資本市場において、それぞれがどのようなお仕事をするかと言いますと、初めの銀行の場合は、投資銀行、商業銀行、株式調査、販売および取引業務などを担います。
そして公認会計士事務所の場合は、デューデリジェンス、取引アドバイス、後はバリュエーション、つまり企業評価を行うのがお仕事となります。もちろん、会計士事務所には税務関連のお仕事もありますが、ここでは資本市場に限っていますので含めてはいません。
ちなみに、デューデリジェンスという言葉は普段聞きなれないと思いますが、これは簡単に言いますと、「法的要件を満たすために人が取る合理的措置」という事です。そのため例えば、「デューデリジェンスを確認する」と言った場合、「法的要件を満たすために、どのような合理的措置が取れるかを確認する」という意味になります。
後、機関投資家の場合は、未公開株の取引、ポートフォリオ管理、市場および企業リサーチの業務が含まれます。
最後の一般企業の場合は、資本市場において、企業開発、投資家向け広報(i.e. Investor Relations)、財務部門、そしてFP&A(i.e. Financial Planning & Analysis)の業務を行います。
2.漸コンサルティングが得意としている分野
この中で、私が得意としているのは、一般企業における企業開発と、Financial Planning & Analysisの分野となります。

企業開発に含まれるものとしては、私の場合、経営戦略が当てはまります。新規事業の計画を作成したり、既存事業の業績改善を提案したりと、業務は幅広いです。
そしてもう一つは、Financial Planning & Analysisで、私の場合は特に財務分析の業務が当てはまります。具体的には、財務アナリストとして財務モデルを作成したり、事業分析や予測分析を行ったりする事を指します。
経営戦略を策定する上で、財務分析のスキルは必要不可欠なので、この二つを自分は一つのスキルセットとして考えています。一般企業では、経営戦略と財務分析の担当者は分かれていると思いますが、仕事の効率性および料金の観点から、両方の分野に精通しているという事は強みの一つと言えます。
ただし留意事項といたしまして、私は企業専門なので、上記三つの銀行・会計・機関投資につきましては、ほとんど何も知らないというのが現実です。なので、これら三つの件でご相談が必要な際は、他の財務・金融プロフェッショナルにお問い合わせください。
3.ファイナンス業界のプレイヤー別特徴
話を戻しまして、ファイナンス業界の各プレイヤーで、キャリアパス、つまり就職の仕方や、お仕事の内容が大きく変わってきますので、簡単にまとめておきたいと思います。

まず銀行についてですが、お仕事の形態は対面での営業・販売の外部志向が強く、事業開発や事業展開を重視しています。資本市場に特化した人材を集める際は、通常、トップクラスの大学に通っていて、かつファイナンスや会計を学んだ、成績優秀な新卒を採用します。ただし、一般の商業銀行(つまり普段私たちが利用している銀行)に関しては、ハードルが若干下がり、就職する道はいくつかあるようです。銀行で働く事の特徴といたしまして、キャリアアップはとても速いのですが、その分仕事の時間は非常に長く、競争が激しくて、離職率も高いと言われています。
次に、公認会計士事務所の特徴ですが、大手の会計事務所の場合はクライアント重視で、対面での営業、つまり外向き志向が強いそうです。しかし、それ以外の大半の事務所は、内向き志向、つまり会計監査を行ったり、財務情報を統括したりといったお仕事がメインとなっているようです。大学の新卒およびほかの会計事務所で働いていた人を採用する傾向にあります。こちらも仕事の時間は長く、競争は非常に激しいです。他のプレイヤーと異なり、公認会計士事務所のキャリアパスは明確になっているので、それが大きな特徴と言えます。つまり、昇進すればどのような役職となるかを事前に予測できるので、将来設計をしやすいという事でしょうか。
三つ目は、機関投資家についての特徴をご説明します。こちらも会計事務所と同様に、市場や企業のリサーチを行ったり、企業の評価分析を行ったりと、主に内部重視のお仕事となるようです。MBA卒業生や銀行経験者を雇う傾向にあります。長時間労働で競争は激しいのですが、不思議なことに離職率は低いと言われています。キャリアアップはとても速いです。
最後の四つ目は、一般企業についての特徴となります。企業においては、営業部門でない限り、通常は市場や企業のリサーチおよび財務分析などの内部重視で仕事を行います。なぜかと言いますと、企業でのファイナンスの役割とは、組織をサポートしたり、事業の目的を達成したりする事だからです。大学の新卒者や、銀行・会計事務所・機関で働いていた人など、エントリーレベルからシニアレベルまで、様々な分野から幅広く人材を採用します。そのため、仕事の条件やその後のキャリアパスも、個々人によって全く異なります。
一応注記しておきますと、ここでご説明している内容は、全て外資系企業を前提としています。グローバル化してしばらく経つ日本も、おそらく状況は似ているだろう、という仮定の元で話しています。
4.一次市場の仕組み
それでは、前半でご紹介したファイナンス業界のキープレイヤーをベースに、資本市場の全体をご説明してみたいと思います。
最初はプライマリーマーケット、つまり企業と投資家の間で株式や債券の取引をする一次市場についてです。

まず、資金を必要としている企業(図中の左側)がいると仮定します。その一方で、こちら側(図中の右側)には、お金を持っている投資家を代表する、ファンドマネージャーがいると仮定します。この場合、ファンドマネージャーは“買う側”です。
この二つの間には、企業と機関投資家の取引を仲介・促進する、投資銀行がいます。この場合ですと、投資銀行は“売る側”となります。
企業は資金が必要なので、投資家から資金調達をする時に、投資家に対して新規に有価証券を発行します。これら資金の移動や、株式および債権の新規発行には、この投資銀行を通して行われます。
これが、一次市場と呼ばれるマーケットでの取引です。
5.二次市場(流通市場)の仕組み
次に、セカンダリーマーケット、つまり企業が介在せず、単純に投資家の間で取引が行われる二次市場(または流通市場)についての説明に移ります。
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まずは、上場企業の株式を購入したいと考えているファンドマネージャー(図中の右側)がいるとします。そしてもう一方には、株式を売却したいと考えているファンドマネージャー(図中の左側)がいるとします。
それらファンドマネージャー間の取引を促進・手助けするために、それぞれに投資銀行がいて、間を仲介します。この時、投資銀行は営業販売、取引、そして株式調査の役割を担います。
各ファンドマネージャーは、それぞれの投資銀行を通じて、証券取引所(図中の真ん中)で株式を売買する形になります。
これが、二次市場と呼ばれるマーケットでの取引です。
6.資金調達や事業の買収・売却のための取引タイプ
最後に、市場での取引のタイプをまとめて終わりにしたいと思います。

まずは、新規株式公開、通称IPO(i.e. Initial Public Offeringの略)と呼ばれている取引です。この時に企業は初めて、自社の新規有価証券を一般に向けて公開します。
そして、自社の資金が足りなくなった場合は、追加の株式公開を行います。
また、一部の個人投資家に資金調達を募る、私募という取引もあります。
企業が他者の事業を合併・買収したい時は、通称M&A(i.e. Merger and Acquisitionの略)を行います。最近世間でよく聞きますね。
それと、レバレッジをかけて、自社の株式価値を出来るだけ下げずに他社の事業を買収する、通称LBO(i.e. Leveraged Buyoutの略)という取引もあります。
後は、何らかの理由によって自社の事業を売却する行為も取引の一つとなります。
以上のような取引を通して、企業は資金調達をしたり、事業を購入または売却をしたりします。
7.まとめ
第二回目の集中講座は、以上となります。
今回は財務知識の基本として、ファイナンス業界のキープレイヤーをご紹介し、それぞれにおいて、どのようなキャリアパスがあるか、そして資本市場における関係性をご説明いたしました。
金融投資をしたり、ご自身で事業を興したりはしなくとも、これからの時代、ファイナンスの基礎知識は知っておいた方が良いのかもしれません。
本講座が少しでも、皆様のお役に立っていれば幸いに思います。
最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。
それではまたお会いしましょう。