【集中講座4】新規事業の立ち上げ-ジェレミー・クラークソンの就農番組から、農業についてブレインストームしてみる
皆さま、こんにちは
今回は第四回目の集中講座として、新規事業の立ち上げについて、経営戦略の観点から考えてみたいと思います。
その際、具体例があった方が話しやすいので、現在Amazon Prime Videoで配信中の番組、『ジェレミー・クラークソン 農家になる』を参考にしつつブレインストームしていきます。
この番組は、イギリスで最もテレビ視聴されたAmazonのオリジナルシリーズとして有名です。例えば、第2シーズン1話のテレビ視聴者数は、英国で420万人を記録しています。PCやスマートフォンを含めれば、さらに多くの人が視聴した事になります。
農業に関心のある方だけでなく、ビジネスやコメディの観点からも楽しめる内容になっていると思うので、ご興味ありましたら、一度ご覧になってみてください。
それと、すでに番組を知っていて、背景のご説明が必要無い場合は、本題が始まる見出し2よりご覧ください。
本内容について、もし何か気になる点がございましたらご指摘いただけますと助かります。
動画で見たい方は、下記のリンク先よりご覧ください。
YouTubeチャンネル:
『【集中講座4】ジェレミー・クラークソンの新規就農番組から、農業についてブレインストームしてみる』
また、文章で読みたい方は以下に内容を書き出します。
それでははじめます。
1.背景の説明
最初に、アマゾンで配信中の番組『ジェレミー・クラークソン 農家になる』や、ご本人についてよく知らない方も多いと思うので、概要をここでご紹介いたします。それと、私個人の農業に関する経験についても少しお話しておきます。
1-1.ジェレミー・クラークソンって誰?
まず、ジェレミー・クラークソンという人物についてですが、彼が一躍有名になったのは、リチャード・ハモンド、ジェームズ・メイと共に3人で共同司会を務めた自動車番組、『トップ・ギア』のおかげでしょう。こちらの方々です。
最初の写真は若かりし頃のもので、二つ目の写真はBBC放送のトップ・ギア時代、そして三つ目は、アマゾンプライムビデオのプロモーションで撮影された、最近の写真となります。
世界中で熱狂的人気があり、私もオーストラリアに住んでいた頃、友人から勧められてこの番組を見始めました。
ジェレミーの昔からの口癖は「SPEED & POWER」です。彼の人生哲学を的確に表現しています。何事もスピードとパワーがあれば解決すると思っているマッチョ思考な方で、それゆえにリチャードやジェームズとのボケ・ツッコミ的なやり取りが非常に魅力的な番組でした。
番組の中での彼が話している内容を引用します。
「It’s the solution to everything. SPEED & POWER.」
『ジェレミー・クラークソン 農家になる』Amazon Prime Videoより
「I believe in SPEED, ……POWER. POWER and SPEED solves many things.」
『トップ・ギア』BBC放送より
シンプルで素晴らしい教えと思います。
また、歯に衣着せぬ容赦のないコメントが売りで、絶大な人気を誇る一方、世間からは批判される事もよくあります。行動力があり、テレビの司会者としてだけでなく、経営者としても実力のある方と思うのですが、田舎で農業を行う上では、手先が不器用で向こう見ずな性格が、仇となる事も多いようです。
今回ご紹介する番組については、山あり谷ありで面白い一方、ご本人とすれば心身ともに大変だった事と思います。
1-2.なぜ農家になろうと思ったのか?
ところで、なぜジェレミーは農家になろうと思ったのでしょうか?農業が好きだからでしょうか?何か栽培したい作物があるからでしょうか?自然の中で生活したいからでしょうか?
それとも、近年よく聞くようになった、SDGs、つまりEcoの観点からでしょうか?地域を発展させたいからでしょうか?
もしくは、儲かるからでしょうか?国から補助金が出るからでしょうか?
番組の中では理由をはっきりとは語られておりませんが、後日のインタビュー内容から、何となくではありますが、答えを推測できるので話しておきます。
おそらく、彼が農業をやろうと思った最初のきっかけは、ごく個人的な理由と思います。例えば、他のAmazon Prime番組『The Grand Tour』では、世界中を飛び回っての体を張ったお仕事をされています。年齢を考えますと、かなりの負担となっていたはずで、そろそろ腰を落ち着けて出来るお仕事をされたかったのではないでしょうか?
ただし、当初は個人的理由だったとしても、農業をしていく内に、彼の仕事への想いが変化していったのは間違いないようです。自分や他の農家が直面している厳しい現実を、いろいろ目の当たりにしてきたからと思います。
2022年10月に行われたインタビューの中では、自分はもう十分お金があるからと、若いケイレブの社会的成功を願ったりと、振る舞いや言動に落ち着きが見られ、何か人間的に深みが出てきたように思います。以前のやりたい放題だったジェレミーのキャラクターからは、とても想像できない変化です。
1-3.番組の他の登場人物について
それと、番組で登場する人物についても、簡単にご紹介しておきます。
まずは、ジェレミーの彼女であり、直売所などを運営・管理するリサ・ホーガン(上図左から2番目)です。ジェレミーと同じく細かい事は気にしないご性格のため、年齢差はありますけれど、気は合うのかもしれません。
そして、農業などの現場作業全般でジェレミーを指導する事になる、ケイレブ・クーパー(上図右から2番目)です。彼は中学生くらいの頃から畑仕事をしてきているため、農業だけではなく畜産・土木など、まだ20代前半にも関わらず、幅広い現場作業に精通しています。ケイレブの存在が無ければ、実質ジェレミーは何も出来ないでしょう。ちなみに、この番組をきっかけにして、彼は『British Farming Awards 2021』で受賞されました。
次は『陽気なチャーリー』こと、チャーリー・アイルランド(上図一番左)のご紹介です。実際には全然陽気じゃありませんが、例えば欧米では、大柄な体格の人に『リトルジョン』などという逆のニックネームを付けたりするので、あちら特有の文化またはジョークかと思います。
彼の職業は『Land Agent』と番組内でご紹介されているのですが、実際にやっているお仕事を見ますと、『農業専門の経営コンサルタント』と言った方がより正しいと思います。彼のコンサルティングスタイルは、どちらかと言えば、攻撃よりも守り主体です。
動画を見れば分かりますけれど、経営者であるジェレミーは非常に積極的な事業展開をされるので、裏で事業サポートを行うチャーリーとは、能力的にもそして性格的にも、相性が良いと思います。後日の記者インタビューの中で、ジェレミーやケイレブも「彼のような人材は必要不可欠」とお話されておりました。
ちなみに、チャーリーは守り重視ですが、私が似たようなサービスをご提供する場合は、クライアントに合わせてコンサルティングスタイルを変えます。例えば、積極的な意見が必要であればそのようにいたしますし、逆に事業の守りを重視してほしいという事であれば、チャーリーのような裏方サポートに徹します。あくまでケースバイケースです。
後は、ジェラルド・クーパー(上図一番右)という方がいらっしゃいます。彼は地元で何十年も農業をしている、ベテラン農家となります。なまりがあり、ジェレミーも彼が何を言っているのか時々分からないようですが、仕事の意思疎通は出来ているようです。いつも笑っているので、番組の中ではコメディ的な癒し系キャラとして描かれていますけれど、現場の仕事は一通りこなす事ができますし、『縁の下の力持ち』と言った所です。
他にも沢山登場人物はいますが、ジェレミーを含め、とりあえずこの五人が番組の主要メンバーと言って良いと思います。
1-4.私の農業経験について
それと、本題に入る前に私の農業経験についてもお話しておきます。
2011年に東日本大震災が起きた後、畑を5アール、坪数で言うと150坪借りて、自給自足を目指した農業に何年か挑戦していた事があります。
その時に、新規就農を真剣に考えていました。
結局は、ある会社の代表にスカウトされたので、計画を立てただけで終わったのですが、今思うと、その決断は正しかったと思います。
その理由は、農業は体が資本なので、私のように健康に少しでも不安がある人は、よく考えた上で人生を決める必要があるからです。
それと、私の農業の知識に関してですが、野菜と薬草の栽培、そしてニワトリの飼育に関しては多少知っている程度で、農家としてやっていけるほどではありません。
なので、あくまでビジネス戦略に圧倒的な強みを持つジェネラリスト、つまり経営戦略コンサルタントとして論じますので、その点にご留意ください。
以上、背景のご説明は十分と思いますので、本題に入ります。
2.新規就農するためにはどうすれば良いか?
最初に、今回のジェレミー・クラークソンのように、新規就農を希望している人からご相談を受けた場合、経営コンサルタントとして自分でしたら次のように話を進めると思います。
ただ、その前に注意事項として、ここではジェレミーが将来考えている多角化経営、つまり、農業に加えて畜産業・小売業・飲食業などにも新規参入を考えている、という事実をコンサルタントが知らない、という前提でお話します。仮に、この時点でいろいろなビジネスをジェレミーが考えていると分かれば、リスク管理が非常に重要となってくるので、コンサルティングの中身も多少変わっていくはずです。
それでは、どのようにコンサルティングを進めるかと言いますと、私でしたらまず、彼がすでに作物を栽培可能な圃場を保有しているかどうかを確認すると思います。
彼の場合、自分の畑を500エーカー以上持っているので、この点においては全く問題ありません。ちなみに、500エーカーがどれだけ大きいかと言うと、1.4キロメートル四方の正方形を想像してみてください。それだけ広い圃場を、彼は所有しているという事です。
したがいまして、日本人が一般的にイメージする農業とは、規模が異なる点にご注意ください。
その上で、彼の事業構想を伺いつつ、その土地に合わせた栽培作物をリサーチし、いくつか提案・助言すると思います。
その際、作物の収益性と実行可能性を見ていきます。収益性とは売上やコストの事です。この場合は、市場分析してもあまり意味がないと思うので、供給サイド、つまり生産量などから売上やコストの予測額を見積もります。まだリサーチ段階のため、計算はざっくりで構いません。実行可能性については、栽培できるかどうか、販売できるかどうか、そして時間はあるかどうかの観点から私は見ていくと思います。
ちなみに、このような課題解決法は、その時々の状況に応じて変わっていきますので、ベターなやり方をその都度導き出す必要があります。教科書から学んだわけではないのでご注意ください。
まず、栽培できるかどうかを判断するために、財務状況として、自己資金がどれだけあるか、初期投資額はどれくらいになりそうか、補助金が出るかどうか、そして出るならどれくらいの割合で補助されるのかを確認し、他には栽培スキルや機械のメンテナンス知識がどれだけあるか、そして困った時には助言を受けられる各分野の専門家がいるかどうか、後は結構見過ごされがちなのが、その作物を栽培する際の規制やルールがあるかどうかも確認しておく必要があります。
また、収穫した作物をちゃんと販売できるかどうかのチェックも大事です。実用的な販路はあるかどうか、あるとしたらどのような品質、どれだけの量を卸業者は求めているか、相場価格はいくらか、そして、今回のケースでは特に必要無いと思いますが、プロモーションをした方が良いかどうかも確認します。
後は、どんなビジネスにおいても重要となるであろう、タイムマネジメントの確認です。例えば、ある作物が栽培出来て、かつ販売可能と分かっても、その年の作付け時期を逃してしまったら元も子もありません。したがいまして、このケースにおいては重要な論点となります。
ジェレミーの畑仕事を見ていると、行き当たりばったりで、トラブル続きである事から、事業計画をしっかり立てた上で農作業を進める重要性がよく分かります。無計画な仕事は、自分一人でやっている内は良いのですが、社員を雇い始めた時に困る事になります。良い人材が中々定着しませんし、結果として生産性も向上しないからです。
仮に、どうしても時間に余裕が無いと分かれば、新規就農者であっても、経営者としてどうするかを決断する必要があります。リスクを取ってでも必要な設備投資をして、全力で出たとこ勝負をするか、それとも、リスクを最小限に抑えるために、初年度は割り切って小規模な試験栽培に留め、来年から本格的に農業に参入するか、何が正しいかは自分で決めなくてはなりません。
それらを十分に踏まえた上で、私はコンサルティングを行うようにしています。
ちなみに、もしご自身の畑がまだ無い場合は、栽培したい作物をリサーチした上で、それに適した圃場を手に入れる事が出来るかどうかを、まずは最優先で確認しなければなりません。当たり前ですけれど、そもそも栽培する場所が無ければ、収益性など他の項目を分析したところで意味は無いからです。
したがいまして、クライアントの要件や条件によって、優先すべき検討項目や論点が変化していく事に注意する必要があります。
3.経営コンサルタントは事業サポートに徹する
このような感じで、いろいろリサーチや検討してみた結果、ジェレミーの場合は、初年度に栽培する作物をオオムギ・小麦・ナタネの3種類と決めたようです。
これら作物は、収穫物をそのまま業者に卸しても良いですし、または加工業者に委託して商品化したり、自分で販売したりしても良いので、手堅い選択肢と思います。
そして、ここからは、現場つまり畑での作業がメインとなりますので、チャーリーや私などの経営コンサルタントの役割は減っていきます。
実際に番組の中でも、チャーリーは定期的に農場を訪問して、ジェレミーに経営や農業に関するアドバイスを行い、そして書類作成などの事業支援を行う形を取っています。決して目立とうとはせず、陰からのサポートに徹しているので、同じコンサルタントとして素晴らしい姿勢と思います。
4.初年度に収穫した作物の収支について
次に、シーズン1の最終話で、ジェレミーが初年度に収穫した作物の収支をざっくりと紹介していたので、ここでまとめてみたいと思います。
これは、畜産業や直売所での売上は含んでいない、純粋に卸業者へ販売した分のみをベースに計算しています。それと、番組の中では曖昧な箇所がありましたので、私の方で一部データを推測いたしました。
まず、初年度の売上は£137,202です。この数字が多いかどうかは、これだけだと分かりづらいので、ご参考までに、以前の圃場管理者の売上を併記します。前年度の売上は£226,000でした。
したがいまして、前年度よりも約40%売上が減少した計算になります。その主な要因は、稀に見る記録的な天候不順です。
そして変動費についてですが、これは種子・肥料・スプレー代などが含まれます。合計すると£68,601です。
後は固定費となりますが、これは人件費や農業機材(つまり減価償却費)などが含まれ、合計額は£68,457となりました。
したがって、売上から変動費と固定費を差し引いた営業利益、つまりEBITは、£144となります。このEBITとは、Earnings before Interest and Taxの略です。ご覧のように、雀の涙ほどの利益しか残りませんでした。
ただし、ここから補助金が入るので、現実には利益額はもっと多くなりますが、仮に補助金なしで事業を始めたとすると、この年はほとんど利益が出なかったという事になります。
いくら天候が良くなかったとは言え、プロのサポートを受けつつ、休み関係なしで働いてこの結果なので、農業は一般的に厳しいビジネスという事がよく分かります。ちなみに、日本においても、新規就農を考える際は補助金を前提に事業計画を立てませんと、立ち行かないケースが多いと思います。(特に耐候性のハウスを建てて、さらに環境制御システムなどを導入する場合)
5.収支の改善点を考察
後は、段落4での収支内容を参考にして、収穫した作物を穀物商人や製粉業者に卸すビジネスについて、何か改善点がないかを考えてみます。
まず売上については、たとえ適切な作付けや栽培管理を行ったとしても、天候や市場変動によって収量や買い取り価格はいかようにも変わるので、リスクマネジメントは中々困難と思いました。
しかしそうではあっても、事業者側で出来る事を全力でやるしかありません。例えば、ジェレミーの農業技術、つまり作物の栽培スキルや機械の操作・メンテナンス技術を一刻も早く向上させ、さらに現状非効率となっている農作業の工程を見直し、収量および買い取り価格を最大化できるように努める事です。
また、機械の扱い方に習熟する事で、パーツの摩耗や破損のリスクを下げることが出来るので、長期的に見ればコスト削減にもつながります。
変動費については、種・肥料・スプレー代など全て必要経費となります。したがって、この番組を見る限り、変動費削減による収益改善は難しいと思います。少なくとも、ケイレブやチャーリーが必要と思うコストに関しては、ケチらない方が良いでしょう。
固定費については、ジェレミー自身の農業スキルおよび体力が不足している事を考慮し、ケイレブ・チャーリー・ジェラルドをはじめとして、スタッフへ支払う人件費の削減はほとんど出来ないはずです。一般的に人間の労働力に頼る割合が多い、労働集約型のビジネスでは、人件費の削減は売上の減少に繋がるので、収益改善においては現実的な手法とは言えません。
しかし一方で、農業機材などを購入する固定費用については、無駄遣いしているようにも見えましたので、ジェレミーのケースではもう遅いのですが、改善の余地はあると思いました。例えば、資金の少ない新規就農者の方は、農業機械やアタッチメントなどの器具は、基本全て中古で購入すべきです。それと、私の経験では、あれば便利と思われる器具や機材は、自分が取り組もうとしている農業に必須でない限り、購入は見送った方が良いと思います。大抵一回使ったら、倉庫にしまってそのままになるのが関の山だからです。経験を積んで必要と思ったら改めて検討すれば良いと思います。
後は施設などの固定費用についてですが、ジェレミーも最初に経験者の意見を聞かず、収穫時になって初めて保管する倉庫が狭すぎると後悔しておりました。建物や設備は、後で修正が効きません。農業に必要な建物・設備・配置となっているかどうか、十分に検討する必要があります。
ただし現実には、自分で農業をやってみないと分からない事も多いため、100%確実で正しいやり方は存在しません。なので、建設を始める前に、プロの意見はいろいろ聞いておいた方が良いと思います。特に利害関係のない、第三者のプロの意見は貴重です。
6.農業コンサルタントと戦略コンサルタントの違い
最後に、チャーリーのような農業専門の経営コンサルタントと、私のようなビジネス戦略専門の経営コンサルタントの違いについて、解説してみます。最初の課題解決アプローチが異なるだけで、結果的にはどちらもやる事は同じなのですが、それぞれの専門性ゆえに一長一短がありますので、表にまとめてみたいと思います。
まず、事業計画の策定などにかかる時間は、農業に関するご相談であれば、当然農業コンサルタントの方が早く作成できます。なぜかと言えば、専門の知識や経験をすでに持っているため、それをベースに仮説を立てて、最小限のリサーチで計画を策定できるからです。
一方の戦略コンサルタントの場合、通常専門の知識や経験は乏しいので、まずは事業全体を俯瞰できるよう、リサーチをしながら、すでにご覧いただいたような形で構造化をしていきます。メリットとしては、検討項目を一通り網羅するので、うっかりミスは少なくなり、リスク管理の観点からは効果的なのですが、デメリットとして、時間はかかる傾向にあります。
ちなみに、うっかりミスとはどのような事を指しているかと言いますと、例えば番組の中では、肝心な時に必要な器具を購入し忘れていたり、農業機械や卸業者の運搬トラックを事前に手配していなかったり、そして作物を一時的に保管するために建てておいた倉庫が小さすぎて、せっかくの収穫物を台無しにしそうになったりした事です。
これは、どちらのコンサルタントが優れているという話ではなくて、例えば新規就農だけを考えている場合は、農業コンサルタントにご相談した方が良いと思いますし、一方で、新規就農はしても、将来的には自分で生産した作物を加工・商品化して、お店で販売したいという多角経営または六次化ビジネスを目指している場合は、最初から戦略コンサルタントにご相談しておいた方が良い場合もあります。よって、ケースバイケースです。
ジェレミーの場合ですと、資金もありますし、当初から農業をベースに、六次産業化を目指していたようにも見えますので、農業に詳しいチャーリーに加え、多角経営にも対応できるコンサルタントを最初から雇っておいた方が良かったと感じます。そうすれば、家畜の飼育による経済的損失、そして直売所やレストラン開業の際の行政とのトラブルなどは、事前に回避できた可能性もあります。
7.まとめ
以上、第四回目の集中講座は、これで終わりにしたいと思います。
今回は、世界的に有名なジェレミー・クラークソンの新規就農事例をブレインストームしてみました。
ここから分かるのは、農業はビジネス的にも、農作業的にも、法律的にも、そして行政との手続き的にもいろいろ大変という事です。補助金無しでは、初期投資を回収するのも困難と思います。
これらは、多くの農家の共通課題となっているため、中には従来の農業から抜け出して、六次産業化つまり多角経営に乗り出す人もいます。ジェレミーもその一人です。六次産業化については、番組の中でも大きく取り上げられていますので、後日の集中講座で別途扱いたいと思います。
最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。
それではまたお会いしましょう。